今期、好調なアジアの投資が欧米のETF流出を補いました。
- 金投資需要は前年同期比5%減の536トンでした。
- 今期、ETF需要の勢いが弱まりました。3月の、主に米国系ファンドからの流出で、1月と2月の流入分の多くが打ち消されました。
- 金地金・金貨投資は474トンと急増し、四半期として過去2番目に多い記録となりました。
29 April, 2026
| トン | 2025年 第1四半期 |
2026年 第1四半期 |
前年同期比 変化率(%) |
|
| 投資 | 563.6 | 535.6 | -5 | |
| 金地金・金貨 | 333.6 | 473.6 | 42 | |
| インド | 46.7 | 62.3 | 34 | |
| 中国: 本土 | 124.2 | 206.9 | 67 | |
| 金 ETF | 229.9 | 62.0 | -73 | |
金価格高騰の原因でもあり結果でもある四半期ごとの投資需要は、2025年初めから(過去の平均と比較して)1非常に高い水準にあります。
このことが最も顕著に見られるのが、需要の拡大と金価格の高騰が重なったため指数関数的に増加した米ドル建ての投資額です。今期、金地金・金貨需要とETF需要の合計額は840億米ドル(前四半期比+5%、前年同期比+62%)に達しました。
1月と3月の金価格の調整は週次ETF流出と連動していて、利益確定、レバレッジ解消、さらに流動性の源泉としての金の利用といった金取引の急増と同時に起きたものです。3月の、下落幅が大きく長期にわたった値下がりは、広範なリスク回避の動きを反映して、流動性ニーズに対応するための資金調達手段として金の売却を一段と加速させた可能性がある。
OTC取引や在庫フローなどの需要(あまり明確ではない投資需要やデータからの統計的残差を含む)は今期、35トンでした。事例報告によると、富裕層やファミリーオフィスなどの投資家は依然、金に関して強気な姿勢を崩していないものの、今期の新規投資は鈍化し、レバレッジの解消も需要の相殺に一役買ったものと思われます。金の裏付けのあるトークンも合計に寄与した可能性があります。
世界の金ETFは、7四半期連続でプラスの需要となりました。今期、世界全体の運用残高は62トンの増加でしたが、これは過去4四半期の平均200トンに比べるとはるかに緩やかなペースと言えます。3月の大幅な流出により、1月と2月の大量流入の大部分が相殺されることとなりました。
120億米ドルの流入により、世界の運用資産残高は6,070億米ドルに達し、2025年度の水準を9%上回りました。
地域別では、今期を通して毎月着実に需要を上げたのはアジア地域だけでした。アジア地域のファンドは84トンを新たに購入しましたが、第4四半期としての最高記録91トンにわずかに及びませんでした。
地域の成長を引っ張ったのは中国:安全な避難先としての購入、国内株式市場の下落、通貨安が買いを促しました。
今期後半、利益確定売りが見られたものの、インドの投資家たちは金ETFの保有量を増やしました。同地域の他の場所では、押し目買いの動きが流入を下支えしました。日本の投資家も国内の金連動型ファンドや、他地域で上場されている金ETFに投資するファンドを通じて、成長に大きく貢献しました。
今期、欧州系ファンドは、2月初旬の価格調整をきっかけとして解約が相次いだことで8トンの流出となり、小幅な需要減となりました。3月にはインフレ懸念の高まりから圧力が強まりましたが、同月後半に金価格の回復と連動する形で再び流入に転じました。
一方、北米系ファンドは、3月の急激な反転によって9カ月間続いた流入が終わりを迎えたことで、16トンの減少を記録しました。数ある要因の中で、米ドル高や大幅な金利上昇、金利予想が、金需要の重しになりました。
その他地域のファンドは保有高を2トンと若干増やしましたが、その大半はオーストラリアによるものです。
今期は、金地金・金貨投資に関しては2013年第2四半期の602トンに次いで2番目の記録を達成した極めて好調な四半期となりました。ただし、金額ベースではこれまでの記録を塗り替えて、740億米ドルにまで達しました。ちなみに、過去5年間の四半期別需要は平均230億米ドルでした。
旺盛な需要は、価格上昇が勢いを増した1月に集中していました。とはいえ、今期を通じて買いは継続し、一部の投資家は価格調整局面を利用して買い進めました。
中国では、金地金・金貨需要の爆発的な増加によって、四半期としての過去最高を記録しました。需要は207トンまで一気に拡大し、2013年第2四半期に記録した155トンを大幅に上回りました。
金の高価格と、他の国内資産に比較して高水準にあるパフォーマンスがこれまでどおり需要を押し上げるとともに、貿易リスクと世界的な地政学的緊張の高まりがさらなる推進力として働きました。市場からのフィードバックによれば、人気のある小型投資商品の一部が、1月と2月に在庫切れになったとのことです。
第4四半期に導入された金宝飾品に対する新しい付加価値税も引き続きこの分野に恩恵をもたらし、投資目的のために購入されていた金宝飾品の一部が金地金・金貨へとシフトし、金地金・金貨需要が宝飾品需要を上回るという傾向が一段と強まりました。
金投資は同様の要因、すなわち金利低下への期待、世界的・地域的な地政学的不確実性の高まり、金価格の高止まりなどにけん引され、第2四半期も堅調に推移する可能性が十分あります。さらに、中国の保険会社が金投資への配分を増やす可能性があり、このセクターにとってプラス要因となっています。
今期、インドの金地金・金貨投資は前年同期比34%増の62トンに達し、第1四半期として2013年以来の高水準になりました。金地金・金貨の旺盛な需要は宝飾品の購入量にほぼ匹敵しており、従来宝飾品の消費量が金地金・金貨需要の数倍であった市場においては大きな変化と言えるでしょう。
今第1四半期では、前年の第4四半期の特徴であった現象が引き続き見られました。それは投資家が金価格の驚異的上昇に惹きつけられたことと、一定程度の需要代替が見られたことです。需要代替では、宝飾品需要の一部が低マージンの投資商品へと移って行きました。
金地金・金貨需要の強さが他の金投資分野にも波及し、今期のETF運用残高は20トンという記録的増加となり、またオンライン金商品への流入も継続してありました。
インドにおけるこの分野の金需要の強さが続くかどうかは、ある程度金価格の動きに左右されるはずであり、今後も価格が上昇すれば持続していくことになるでしょう。ただし、モンスーンが平年を下回ったり、中東戦争の影響がインフレに及んだりすれば、所得を圧迫し、購入を抑制する可能性があります。
中東ではほとんどの市場で金地金・金貨需要が前年同期比でプラスとなりましたが、これは前四半期比がマイナスであった世界的傾向とは対照をなすものです。
価格変動の影響が大きかったことに加え、地域における戦争の勃発も影響し、特にUAEとイランでは日常生活の混乱が深刻なレベルに達しています。
トルコでは旺盛な買い意欲から今期、金地金・金貨需要が増大し、金投資商品の現地プレミアムは一時、1オンスあたり300~400米ドルまで上昇しました。今期、利益確定売りが増加したものの、金額ベースでの需要は過去最高の40億米ドルを記録しました。
米国では今期も、金地金・金貨市場が活況を呈し、売り手と買い手双方の動きが活発でした。正味需要は前年同期比で14%の増加でしたが、2月と3月上旬に買いが鈍り、その後、価格調整によって買い機会がもたらされたことで今期後半に回復し、前四半期比は20%のマイナスでした。
事例報告によると、金価格の動向に注目が集まる中、今期も新規投資家の市場参入が続いたとのことです。関係者との会話で、極めて軽量の投資商品が人気を集めていることが判明しましたが、おそらく購買能力に制約がかかっている状況を反映したものと思われます。
今期、ヨーロッパでは双方向の取引も活発に行われ、需要は差し引き41トンとなりました。これは前四半期と同水準ですが、前年同期比では50%の増加でした。
今期を通しての需要の推移は米国と同様であり、1月は価格の堅調さを反映して活発な購入が見られたものの、2月下旬から3月上旬にかけて価格が調整局面に入ると、需要は減少しました。
今期最後の週以降、投資家がより低い価格帯で保有量を増やそうと、安値買いの動きが活発化していると言われています。
追加の情報源に基づき、2020年以降のインドネシアの金地金・金貨需要に関するデータシリーズを上方修正しました。
この修正で、今期の需要が前期比で倍増するなど近年好調なインドネシア市場の状況が裏付けられました。金は資産の安全な避難先としての地位が確立していて、経済の不確実性やインフレへの懸念を抱える投資家にとっては魅力ある投資対象となっています。
タイの投資は10トンに達し、2019年以来最も力強い第1四半期となりました。経済的・政治的な不確実性の高まりと金価格の上昇が相まって、安全な避難先としての需要を下支えしました。
ASEAN地域で最も低調だったのはベトナムであり、前年同期比は24%減の9トンでした。ただし、前四半期比は31%の増加でした。比較的低調な今四半期合計は、過去最高値を何度も更新した金価格によるものです。国内供給の制約も課題となっており、国内プレミアムは非常に高い水準に押し上げられ、その結果、投資家の間には準投資的なカイリングを通じて金へのエクスポージャーを求める動きが見られます。
韓国では、金地金・金貨需要が四半期として、ワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズにおける過去最高を記録しました。金価格の上昇が投資家を惹き付け、国内供給を圧迫し、国内価格をプレミアムへと押し上げたことで、2025年第4四半期の需要急増が今期も続く結果となりました。
今期、日本の金地金・金貨投資は急激に増加し、ETF市場で見られる需要の強さと合致する動きを示しました。絶対値としては小さいものの、2四半期連続で正味需要の着実な増加が見られたことは、この市場の強さが持続的なものであることを示しています。今回もまた、日本の投資家による買いが、引き続き高水準にある売り戻しを上回ったことになります。
オーストラリアの金地金・金貨需要は前四半期の水準には達しなかったものの、4トンという数字は近年の平均との比較では依然高い水準にあります。
1月は前年の第4四半期の金ブームが続き、投資家が金地金ディーラーの前に列を作る光景が見られましたが、2月になると価格の下落に伴い、勢いに陰りが生じるようになりました。3月に入ると価格の下方修正が進み、投資家が利益を確保しようと動いたことで、利益確定売りが急増しました。
| 2025年 第1四半期 |
2025年 第2四半期 |
2025年 第3四半期 |
2025年 第4四半期 |
2026年 第1四半期 |
前四半期比 変化率 (%) |
前年同期比 変化率 (%) |
|
| インド | 46.7 | 46.1 | 91.6 | 96.0 | 62.3 | -35 | 34 |
| パキスタン | 5.0 | 4.8 | 4.3 | 5.4 | 6.7 | 25 | 34 |
| スリランカ | - | - | - | - | - | - | - |
| 中華圏 | 126.7 | 118.3 | 76.6 | 122.7 | 210.7 | 72 | 66 |
| 中華人民共和国本土 | 124.2 | 115.1 | 73.7 | 118.7 | 206.9 | 74 | 67 |
| 香港特別行政区 | -0.4 | 0.8 | 1.0 | 0.6 | 0.2 | -64 | - |
| 台湾 | 2.9 | 2.4 | 1.9 | 3.4 | 3.6 | 7 | 23 |
| 日本 | 0.2 | -0.3 | 1.0 | 3.1 | 3.8 | 24 | 1,983 |
| インドネシア | 16.1 | 10.4 | 17.7 | 11.7 | 23.6 | 102 | 47 |
| マレーシア | 2.5 | 2.0 | 2.1 | 3.7 | 3.8 | 3 | 57 |
| シンガポール | 2.5 | 2.2 | 1.8 | 3.3 | 3.5 | 7 | 42 |
| 韓国 | 7.0 | 5.3 | 5.9 | 11.5 | 12.5 | 8 | 80 |
| タイ | 7.4 | 10.0 | 15.1 | 18.9 | 10.0 | -47 | 35 |
| ベトナム | 12.0 | 9.5 | 7.7 | 7.0 | 9.1 | 31 | -24 |
| オーストラリア | 3.1 | 3.6 | 3.2 | 5.2 | 3.9 | -27 | 23 |
| 中東 | 28.4 | 31.0 | 28.3 | 30.6 | 26.4 | -14 | -7 |
| サウジアラビア | 4.4 | 3.4 | 4.5 | 5.3 | 5.1 | -4 | 15 |
| UAE | 3.1 | 4.1 | 3.4 | 4.2 | 4.0 | -5 | 27 |
| クウェート | 1.4 | 1.9 | 1.5 | 1.9 | 1.8 | -5 | 27 |
| エジプト | 4.7 | 5.9 | 5.6 | 7.4 | 5.7 | -23 | 22 |
| イラン | 12.7 | 13.1 | 11.4 | 9.1 | 7.3 | -20 | -43 |
| その他の中東 | 2.1 | 2.6 | 2.0 | 2.7 | 2.6 | -4 | 27 |
| トルコ | 20.2 | 15.3 | 14.3 | 21.3 | 26.1 | 23 | 29 |
| ロシア連邦 | 7.6 | 8.5 | 9.5 | 9.9 | 11.3 | 14 | 49 |
| 米州 | 19.5 | 10.7 | 16.0 | 26.8 | 21.8 | -18 | 12 |
| 米国 | 15.9 | 7.8 | 13.5 | 22.6 | 18.1 | -20 | 14 |
| カナダ | 3.0 | 2.3 | 1.8 | 3.4 | 3.0 | -11 | 1 |
| メキシコ | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 32 | 31 |
| ブラジル | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.5 | -10 | 20 |
| 欧州(CIS を除く) | 27.5 | 29.8 | 29.5 | 41.7 | 41.2 | -1 | 50 |
| フランス | -1.2 | -0.3 | 0.1 | 2.5 | 2.3 | -5 | - |
| ドイツ | 10.5 | 10.9 | 9.8 | 13.6 | 12.3 | -10 | 17 |
| イタリア | - | - | - | - | - | - | - |
| スペイン | - | - | - | - | - | - | - |
| 英国 | 4.0 | 3.2 | 4.2 | 6.8 | 6.4 | -6 | 58 |
| スイス | 5.8 | 6.3 | 6.0 | 6.9 | 7.9 | 15 | 37 |
| オーストリア | 0.8 | 0.9 | 1.2 | 1.4 | 1.7 | 21 | 100 |
| その他の欧州 | 7.5 | 8.8 | 8.2 | 10.6 | 10.6 | 0 | 41 |
| 小計 | 332.3 | 307.1 | 324.6 | 418.7 | 476.9 | 14 | 44 |
| その他・在庫変動 | 1.4 | 5.4 | 3.7 | 9.3 | -3.3 | - | - |
| 世界合計 | 333.6 | 312.5 | 328.3 | 428.0 | 473.6 | 11 | 42 |
出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル