宝飾品の取引量は、金価格の高騰に伴い減少を続けています。
- 今第1四半期における世界の宝飾品需要は2020年第2四半期以来の低水準に留まり、300トンでした。
- ただし、金額ベースでは470億米ドルと四半期需要としての過去最高を記録しました。
- 記録的高価格のために純重量で見た場合の購入が減少しているにもかかわらず、金宝飾品への支出は増加しています。
29 April, 2026
| トン | 2025年 第1四半期 |
2026年 第1四半期 |
前年同期比 変化率(%) |
|
| 世界合計 | 391.2 | 299.7 | -23 | |
| インド | 81.6 | 66.1 | -19 | |
| 中国:本土 | 124.9 | 85.2 | -32 | |
宝飾品需要は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行以降で最低水準まで下がり、ワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズでもわずか1度しか記録がなかった300トンを(わずかながら)下回る水準まで落ち込みました。それとは対照的に、金額ベースでは前年同期比31%増の470億米ドルで、第1四半期としての記録を達成しました。
こうした最近の傾向を受け、宝飾品を購入する消費者は金価格の影響を強く受けていました。1月に史上最高値に達したことで需要が抑制され、その後調整局面に入ったものの、金価格は過去の記録を上回る水準に留まりました。
このことは世界的需要の変化にも表れており、加工(宝飾品とテクノロジー)の市場シェアは投資に奪われています(図4)。
今年、中国のスタートは芳しいものではなく、宝飾品需要は前年同期比32%減の85トンでした。この減少の最も重要な要因は金価格でしたが、需要をさらに押し下げたのは、消費者心理が悪化したことと、実質所得の伸びが鈍かったことによります。第4四半期に導入された金宝飾品に対する付加価値税の取り扱い変更が、さらなる抑止力になりました。
しかし、特筆すべきは金宝飾品への支出が前年同期比16%増の130億米ドルとなったことです。このことは、価格高騰によって小さくて軽量の商品を選ばざるを得なくなっても、金に対する中国の消費者の傾倒が根強いことを示しています。
宝飾品需要の一部は、付加価値税の増税対象外となった低プレミアムの投資商品へと振り向けられた。このことは今期、宝飾品の「新旧」交換が増加したことの理由ともなっておます。
需要は低調だったものの、硬質純金製宝飾品のパフォーマンスは比較的好調でした。その要因としては、特にデザインの革新性を重視する若い消費者の間で、軽くて手頃な価格帯の商品が人気を集めたことが挙げられます。その一方、高級な伝統的金宝飾品に対する需要は、精緻な手仕事や上質な販促体験に魅力を感じる高所得層の消費者の間で堅調な動きを見せました。
金宝飾品の需要は、季節的に閑散期に入る第2四半期は低調なまま推移するものと思われます。ただし、購入者が新しい付加価値税制や高価格に慣れるにつれ、また、金利引き下げの可能性が裁量支出をさらに押し上げる可能性があることから、消費者マインドの改善が見込まれます。
金の記録的高価格が続いたことで、今第1四半期のインドの金宝飾品消費は減少しました。しかし、現地金価格が前年同期比で81%上昇したことを考慮すると、需要は底堅いと言えるでしょう。この見方は、金額ベースの需要が100億米ドルという第1四半期としての最高記録となったことで証明されています。
記録的な価格高騰の中で、インドの消費者はより手頃な価格で軽量の宝飾品へのシフトを続けており、大手チェーン店でも低カラット商品の在庫比率が増加しています。
しかし、マスマーケット向け宝飾品と高級宝飾品の間には明確な乖離が存在します。高所得層の顧客が価格に関係なく重量のある宝飾品の購入を続けている一方で、マスマーケットの顧客は量を減らしたり、価格の影響を相殺するために低カラット、軽量、またはスタッズ付き宝飾品に切り替えたりするなど購入額を抑えています。
他の宝飾品の潜在顧客は、宝飾品よりもプレミアムが低い金地金や金貨に切り替えたことが考えられます。
今期、古い金宝飾品を新しいものと交換する取引が市場活動のかなりの部分を占めた一方で、金宝飾品を担保として融資を受ける動きも依然堅調でした。金宝飾品を担保とした個人向け銀行融資の残高は、2月末時点で4兆3,000億インドルピーに達し、前年同期比124%の増加でした。
中東の各市場では今期、金宝飾品需要が軒並み前年同期比で2桁の減少を記録しました。対照的に、金額ベースでは前年同期比30%増の50億米ドルとなりました。
2月のラマダンとイードは金宝飾品需要をある程度下支えしましたが、金価格の記録的な高騰とそれに続く地域での戦争勃発が重なり、一部の市場では需要の動きがほぼ止まった状態となりました。
トルコにおいても今期、金額ベースで過去最高の需要が記録されましたが、金宝飾品の販売量は引き続き低迷したままでした。需要は、高騰し、激しく変動する金価格と、国内で続く高インフレによって抑制され、消費者マインドは地域的、世界的な地政学的不確実性によって低迷する結果になりました。
今期、記録的な金価格以外に関税の影響もあり、米国の宝飾品消費者にとっては大きな購買障壁が生じることとなりました。米国は、需要額が前年同期比でマイナスとなった数少ない市場の一つとして注目されました。
需要の低迷は、金宝飾品の輸入量の急激な減少に表れていて、これは顧客が購入頻度を減らし、より軽量の商品にシフトしたことが理由です。
欧州の需要は世界的な傾向とほぼ一致しており、量は減少したものの(これは純重量の減少を示している)、金価格の上昇によって金宝飾品への支出が増加したため、金額ベースでは増加となりました。
高価格により、ASEAN諸国全体で低カラットの宝飾品や投資商品へのシフトが進んでおり、ワールド ゴールド カウンシルでは、ASEAN諸国の個別の金需要データを報告しています。結果的に、4つの市場すべてにおいて需要量は非常に低調でしたが、金額は増加しました。中でもベトナムの増加が顕著で、4億7,200万米ドルという過去最高記録を達成しました。金地金の供給不足がもとで、代替投資手段としてのカイリングに対する需要が高まったことが原因の一つとして考えられます。
今期の日本の金宝飾品需要は、2025年第1四半期と同水準でした。準投資の対象である金のネックレスや装飾品の購入は、他の大半の市場で起きた広い範囲に及ぶ需要減から日本を守ることになりました。
今期、韓国では押しと引きの力学が顕著に見られました。婚礼関連の需要が回復したことが支えとなったものの、低カラット商品へのシフトが続いたことで、需要は若干減少しました。ただし、金額面では四半期として過去最高の6億300万米ドルに急増しました。
オーストラリアでは今期、金価格の高騰が金宝飾品の需要を押し下げ、世界全体の減少傾向とほぼ同じように減少となりました。
| 2025年 第1四半期 |
2025年 第2四半期 |
2025年 第3四半期 |
2025年 第4四半期 |
2026年 第1四半期 |
前四半期比 変化率 (%) |
前年同期比 変化率 (%) |
|
| インド | 81.6 | 88.8 | 125.0 | 145.3 | 66.1 | -55 | -19 |
| パキスタン | 4.2 | 4.1 | 3.7 | 3.9 | 3.5 | -10 | -15 |
| スリランカ | 1.0 | 1.2 | 1.0 | 0.9 | 1.1 | 21 | 9 |
| 中華圏 | 132.5 | 73.8 | 90.7 | 89.0 | 91.2 | 2 | -31 |
| 中華人民共和国本土 | 124.9 | 69.2 | 84.1 | 81.9 | 85.2 | 4 | -32 |
| 香港特別行政区 | 6.4 | 3.7 | 5.8 | 6.2 | 4.8 | -22 | -25 |
| 台湾 | 1.2 | 0.9 | 0.8 | 0.9 | 1.1 | 25 | -10 |
| 日本 | 3.0 | 3.0 | 3.3 | 4.0 | 3.0 | -26 | 0 |
| インドネシア | 4.1 | 3.3 | 3.8 | 5.4 | 3.3 | -39 | -20 |
| マレーシア | 3.8 | 2.5 | 2.3 | 2.4 | 2.9 | 24 | -23 |
| シンガポール | 1.7 | 1.5 | 1.4 | 1.4 | 1.5 | 7 | -13 |
| 韓国 | 4.1 | 2.6 | 2.5 | 2.4 | 3.9 | 60 | -5 |
| タイ | 1.8 | 1.6 | 2.1 | 2.3 | 1.7 | -27 | -5 |
| ベトナム | 3.5 | 2.5 | 2.2 | 2.4 | 3.0 | 28 | -14 |
| オーストラリア | 1.9 | 1.1 | 1.8 | 2.3 | 1.5 | -32 | -20 |
| 中東 | 45.1 | 39.8 | 33.4 | 35.0 | 34.5 | -2 | -23 |
| サウジアラビア | 14.6 | 11.2 | 9.3 | 9.0 | 12.7 | 41 | -13 |
| UAE | 7.9 | 7.7 | 6.4 | 7.5 | 4.7 | -37 | -40 |
| クウェート | 2.4 | 2.7 | 2.4 | 2.8 | 1.8 | -35 | -25 |
| エジプト | 6.4 | 5.7 | 4.4 | 5.1 | 5.2 | 0 | -19 |
| イラン | 7.2 | 7.3 | 6.5 | 5.4 | 5.0 | -8 | -31 |
| その他の中東 | 6.6 | 5.2 | 4.4 | 5.1 | 5.1 | -1 | -23 |
| トルコ | 8.9 | 9.0 | 7.1 | 7.7 | 6.8 | -11 | -23 |
| ロシア連邦 | 7.5 | 8.0 | 10.1 | 11.0 | 6.7 | -39 | -10 |
| 米州 | 31.7 | 39.8 | 34.2 | 49.8 | 21.1 | -58 | -34 |
| 米国 | 23.3 | 29.5 | 25.3 | 36.7 | 13.1 | -64 | -44 |
| カナダ | 2.6 | 3.0 | 2.4 | 4.4 | 2.2 | -52 | -16 |
| メキシコ | 2.8 | 3.2 | 3.2 | 3.7 | 2.8 | -23 | 0 |
| ブラジル | 3.1 | 4.0 | 3.3 | 5.0 | 3.0 | -40 | -3 |
| 欧州(CISを除く) | 10.0 | 13.9 | 12.0 | 23.5 | 8.3 | -65 | -16 |
| フランス | 2.3 | 2.4 | 2.2 | 5.0 | 2.0 | -59 | -12 |
| ドイツ | 0.9 | 2.3 | 1.9 | 3.3 | 0.9 | -73 | -6 |
| イタリア | 2.3 | 3.6 | 2.5 | 6.2 | 1.4 | -77 | -39 |
| スペイン | 1.9 | 2.0 | 1.9 | 2.5 | 1.8 | -26 | -4 |
| 英国 | 2.5 | 3.6 | 3.5 | 6.5 | 2.1 | -67 | -12 |
| スイス | - | - | - | - | - | - | - |
| オーストリア | - | - | - | - | - | - | - |
| その他の欧州 | - | - | - | - | - | - | - |
| 小計 | 346.4 | 296.4 | 336.4 | 388.8 | 260.2 | -33 | -25 |
| その他・在庫変動 | 44.8 | 41.3 | 41.5 | 48.2 | 39.6 | -18 | -12 |
| 世界合計 | 391.2 | 337.7 | 377.9 | 437.0 | 299.7 | -31 | -23 |
出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル