今後の見通し

29 April, 2026

2026年以降の金需要を押し上げる最大の要因は引き続き地政学リスクであると見込まれています。地政学リスクは、中央銀行による持続的買い越しや、世界レベルでの金ETFへの大幅な資金流入、金地金・金貨による蓄財を下支えします。リサイクルは今年、若干の増加となる見込みです。宝飾品は今後も金の高価格の影響を受けることになる可能性が高いです。鉱山供給は、高価格や高マージンに対応して再び増加することが予想されます。

  • 国債の利回りは、中央銀行が米イスラエル・イラン戦争に伴う供給ショックへの対応に苦慮し、また株式と債券の正の相関がヘッジとしての債券の魅力を損なう中で、政策金利の道筋がより明確になるまで、高止まりする可能性が高くなっています。
  • 過去数年、金価格上昇を助長してきた地政学リスクプレミアムはこれからも続き、今年後半に向けて増大する可能性もあります。
  • 結果的に、ETFとOTCに対する機関投資家の需要は増加するものの、昨年を超えることはないでしょう。一方、リテール投資需要は、高価格や一部の市場で有効な投資代替手段がないこと、インフレ懸念、持続的な不透明性の高まりなどが引き続き、資産保全を目的とする投資家と投機目的の投資家の両方を惹き付けるでしょう。
  • 世界的な地政学リスクへの懸念が有効なリスクヘッジに対する需要を増大させる中、アジアの需要が投資の力強さを支える主要要因であり続けることが十分考えられます。
  • 経済的ショックがなければ、宝飾品支出は堅調である可能性がありますが、トンベースの需要量は、高価格や地域ごとの税制の影響から、減少することが予想されます。
  • 中央銀行による購入は、昨年とほぼ同じレベルで底堅く推移するものと思われます。大幅な値動きや長期にわたる地政学リスクがさらなる上振れ圧力をもたらす可能性はあるものの、需要は順調な伸びを示しています。ただし、さらなる供給ショックが生じた場合、金準備が定期的に動員される可能性は否定できません。
  • 一部地域の操業にエネルギー不足が及ぼす影響に注目していますが、鉱山生産は今年も多少増加すると思われます。リサイクルは増加しているものの、最終製品前の中間在庫の不足や価格高騰が続くとの予想、地政学リスクプレミアムの存在などによって制約を受けることが見込まれます。
 

図2:弱い宝飾品需要を相殺することが見込まれる投資家の強い関心、堅調を維持する中央銀行の購入、若干増加する供給

金の年間需要の変動予測*

図2:弱い宝飾品需要を相殺することが見込まれる投資家の強い関心、堅調を維持する中央銀行の購入、若干増加する供給

図2:弱い宝飾品需要を相殺することが見込まれる投資家の強い関心、堅調を維持する中央銀行の購入、若干増加する供給
金の年間需要の変動予測*
*データは2026年3月31日現在。 出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2026年3月31日現在。

投資

過去数年にわたり金価格を押し上げてきた地政学リスクプレミアムは今後も続き、おそらく今年後半に向けては、米国のFRB議長の交替や中間選挙、長期化・激化する中東紛争、米中関係の悪化などの影響から増大していくでしょう。

そして、中近東で発生した戦争に肯定的な反応を示さなかったことに対する疑問が提起されたものの、過去にもこうした初期動向が見られなかったわけではない。ただし、紛争が長引きまたは世界経済により広範囲な波及効果がある場合、金からの反応はより目に見えてポジティブなものになろう。

このことは、これまでと同様に世界の金ETF需要、金地金・金貨需要を下支えしていくものと思われます。ただし、金利がより長い期間、高水準で推移する可能性があるため、ETF需要が昨年の高水準に達することはないでしょう。これは、中東危機が経済を景気後退へと追い込むほどの供給ショックを引き起こさない限り、一部の投資家による金への投資を押し下げる要因となろう。

これらの要因が組み合わさったことで、投資需要は堅調を維持しつつも、昨年の水準を上回ることはないでしょう。

今年、インドの金地金・金貨需要と国内金ETFは好調なスタートを切りました。価格モメンタムや地政学リスク、相対的に魅力に欠ける投資代替手段などの理由から、投資へのシフトは今年も続く可能性があります。

アジア全域、特に中国の投資需要は価格モメンタムや安全な避難先としての需要の高まり、代替投資手段の欠如からの恩恵を受けることが考えられます。

加工

今第1四半期の宝飾品需要が予想を下回ったため、年間加工需要を下方修正しました。

価格の高止まりが続いており(年初来の上昇幅はすでに昨年並み)、これが世界の需要にとって逆風となっています。さらに、中東における紛争が世界経済の停滞を引き起こせば、消費者マインドのみならず裁量支出の額にも圧力がかかることになります。

先頃中国が行った付加価値税制の改定は同国市場における宝飾品需要を阻害しており、低プレミアムの金地金・金貨へと需要が移る可能性が高まっています。この傾向はインドでも顕著になりつつあります。

 

図3:金価格はすべての通貨で1月にピークに達し、その後明確な調整があったが、全体的傾向は依然変わっていない

各国通貨での金価格推移、2025年1月1日を基準に指数化*

図3:金価格はすべての通貨で1月にピークに達し、その後明確な調整があったが、全体的傾向は依然変わっていない

図3:金価格はすべての通貨で1月にピークに達し、その後明確な調整があったが、全体的傾向は依然変わっていない
各国通貨での金価格推移、2025年1月1日を基準に指数化*
*データは2026年4月21日現在。 出所:ブルームバーグ、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2026年4月21日現在。

中央銀行

今期の中央銀行による買い越しは、特に最近の価格動向や金準備の顕著な動員を踏まえると、安心感を覚えるほど堅調でした。ただし、中東の混乱や流動性ニーズ、為替管理のために、さらなる戦術的なリバランスが生じる可能性は排除できません。より一般的に言えば、地経学的な不確実性は長期の金需要を下支えする。通年のターゲットは昨年同様で、700~900トンです。

供給

高価格によって、大規模金採掘(LSM)と零細・小規模採掘(ASGM)の両セグメントにおいてさらなる増産が実現することで、鉱山生産量は今年もまた、緩やかな増加となる可能性があります。オセアニアやアジアの鉱山では、軽油不足から生産が滞ることが考えられ、その結果、世界の鉱山生産量が予測を下回る恐れがあります。また長期的には、新たなLSMプロジェクトの立ち上げや許認可の取得、資金調達、建設に関わる問題が今後も続くでしょう。

リサイクル

リサイクルが再び増加し始めましたが、おそらく金価格の大きな変動に対する懸念や、エネルギー価格の高騰が消費者の財布に及ぼす影響がその一因であると思われます。米国とイランの対立が長引けば、さらに多くの売り戻しが生じる可能性があります。また、担保付融資に対する圧力が強まれば、インドからの供給が急増するでしょう。ただし、金価格が安定した場合―特に価格上昇の道筋が確実に見えるようになった場合、今期の増加は一時的なものになることが十分考えられます。

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