今後の見通し

30 July, 2026

投資は、OTC取引とアジアの買いに支えられ、今年後半を通して需要増加の主要な要因になると予想されています。中央銀行は引き続き重要な買い手となるでしょう。高価格は引き続き宝飾品需要を抑制する一方で、鉱山生産およびリサイクルからの供給量増加には結び付きません。

  • 投資需要は今年後半、健全な状態を保つものと思われます。OTC取引とアジアの投資がより大きく貢献することが予想される一方で、欧米の金ETFフローは、実質利回りや金融政策への期待、米ドルに対して引き続き敏感に反応する可能性があります。
  • 金地金・金貨需要は、年初の好調なスタートの後、軟化する可能性があるものの、地政学的な不確実性、インフレ懸念、代替投資先の選択肢が限定的なことが今後も下支えとなるでしょう。
  • 宝飾品需要は、高価格が数量を抑制するため、消費支出が比較的底堅い地域であっても、引き続き圧力を受けるでしょう。テクノロジー需要はAI投資からさらなる恩恵を受けるでしょうが、下振れリスクが高まっています。
  • 中央銀行は、ポートフォリオの多様化や、インフレヘッジおよびリスクヘッジの必要性に支えられ、今年も引き続き順調な買い越しとなる見通しですが、年間需要は2025年の合計を下回ると予想しています。
  • 鉱山生産は高水準の金価格と健全な利益率によって支えられ、若干増となる見込みですが、操業上の制約や新規プロジェクトの立ち上げには長い期間を要することから、増加幅は限定的とみています。
  • リサイクルは、さらなる価格上昇への期待、市場近辺で供給可能な在庫の不足や、広範な経済的困窮が見られないことから、わずかな増加にとどまる見通しです。
 

図2:堅調な投資需要が宝飾品の弱さを相殺、中央銀行の買いは持続、供給量の増加は限定的 

金の年間需要の変動予測(トン)*

Chart 2: Healthy investment countered by weak jewellery; central bank buying sustained; supply constrained

Chart 2: Healthy investment countered by weak jewellery; central bank buying sustained; supply constrained
Expected change in annual gold demand, tonnes*
Sources: World Gold Council; Disclaimer *Data to 30 June 2026.

*データは2026年6月30日現在。
出所:ワールド ゴールド カウンシル

投資が引き続き市場を牽引するが、その構成は変化へ

2026年の残りの期間を通じて、投資が金需要拡大の主な原動力となるとみていますが、2025年に見られたような例外的な強さが繰り返される可能性は低いと見ています。

需要は、OTC取引とアジアの投資がさらにけん引役となると予想される一方、北米および欧州における金ETFのフローは、より散発的になる可能性があります。金地金・金貨需要は、年初の力強い伸びを経て落ち着く可能性が高いものの、地政学的な不確実性やインフレ懸念、一部の市場における魅力的な代替投資先の不足といった、金保有を支える要因は引き続き確実に存在しています。

北米のETFにとっての当面の主な逆風は、金保有の機会費用です。実質利回りの上昇と金融政策に対する期待の変化が、第3四半期のフローを抑制する可能性があります。現在、市場では今年10月に1回の利上げを織り込み済みである一方、米国の10年物インフレ連動国債(TIPS)の利回りは2.5%に近づいています。これは伝統的に、金保有の機会費用の上昇をもたらす水準です。ただし、利上げが実施されたとしても、それが必ずしも金価格にとってマイナスになるとは限りません図3)。

 

図3:米国金利との負の相関関係が再び始まった北米のETF需要

北米のETF需要の変化(トン)と米国10年物インフレ連動国債の利回り(%)のローリング週次相関*

Chart 3: North American ETF demand has resumed its negative relationship with US rates

Chart 3: North American ETF demand has resumed its negative relationship with US rates
Rolling weekly correlation between changes in North American ETF demand in tonnes and the US 10-year TIPS yield, %*
Sources: Bloomberg, World Gold Council; Disclaimer *Data as of 17 July 2026. Correlation calculated on a rolling 52-week basis on changes in ETF demand and changes in the US 10-year TIPS yield.

*データは2026年7月17日現在。相関は、ETF需要の変化と米国10年物インフレ連動国債の利回りの変化に基づき、52週間のローリングをベースに算出。
出所:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

すなわち、こうした圧力がある一方で、米ドル安、信用環境の悪化、あるいは株式市場の先行き懸念が強まれば、金の相対的な魅力が高まる可能性があります。さらに、夏場の流動性低下やポートフォリオのリバランスは歴史的に見て、8月のパフォーマンスの堅調さと重なるなど、季節的要因が一定の下支えとなることがあり得ます。また、大型ハイテク株へのポジションの集中や米国の中間選挙を控えた政治情勢は、今年後半の市場ボラティリティを高め、金の魅力が高める可能性があります。投機的なポジションは今年初頭ほどには拡がっていないため、新たな資金流入があっても、投資家がまず大規模なポジション解消を伴う必要はないでしょう。

欧州はこれまで他の地域に出遅れていたものの、第3四半期はより前向きな環境でスタートしました。ただしドイツ国債の実質利回り上昇は、明確な材料がない限り上昇余地を抑制する可能性があります。アジアでは、ETF需要が軟化しましたが、現物投資は引き続き底堅さを維持するでしょう。

中国では、上半期の金地金需要を支えた要因にほとんど変化は見られません。国内金利は依然として低水準にあり、地政学的リスクは高止まりしています。さらに、不動産セクターは一時的な改善が見られたものの依然として不振が続いており、付加価値税(VAT)の枠組みは投資商品の保有を後押ししています。中央銀行による金購入がさらに報じられれば、投資家の関心が一段と高まる可能性があります。インドの投資家は金価格に対して従来通り強気な姿勢を維持していて、押し目買いを行ってきました。ただしモンスーンの降雨量が例年より少なく、農村部の所得に影響が及ぶ可能性があることから、そうした強気の姿勢を抑える可能性があります。総じて、アジアの需要は今後、欧米のETFフローが不安定化した場合でも、世界の金投資需要を支える重要な役割を果たすものと思われます。

加工需要は依然として逆風

加工は、需要の最も弱い構成要素にとどまる可能性が高いです。支出が比較的堅調な地域であっても、高価格が宝飾品の数量(トン)ベースでの需要を抑制し続けています。消費者は、購入量を減らしたり、より軽量な、あるいはより投資性の高い商品を購入したりする傾向がみられます。

中国が、これまでにない大きな圧力にさらされています。ターゲットを絞った景気刺激策がある程度の下支えになる可能性がありますが、金地金・金貨への嗜好変化に加えて、最近の付加価値税(VAT)の変更が、宝飾品需要の正常化を遅らせています。ワールド ゴールド カウンシルの四半期モデルは、高価格環境への適応は徐々に進むことを示しており、仮に価格が安定ないし後退しても、需要量の回復には数四半期かかることを示唆しています。

インドは比較的底堅いものの、軽量な商品や投資商品が購入量全体に占める割合は今後も増え続けるとみられます。

テクノロジー需要は、継続的なAI関連投資から恩恵を受ける見込みですが、リスクのバランスは以前ほど良好ではありません。仮に、AI投資のリターンが期待外れであったり、より広範な電子機器市場全体のサイクルが弱まったりした場合、テクノロジー分野における金の利用が弱まる可能性があります。

中央銀行需要:戦略的な需要は強力だが、2025年の水準には届かず

中央銀行は、今年も大幅な買い越しを記録すると見込まれています。分散投資や危機時のパフォーマンス、地政学的・金融的リスクへの備えといった金を保有する戦略的な意義には依然として確たるものがあり、本第2四半期の需要回復は、ワールド ゴールド カウンシルの最新の中央銀行金準備に関する調査で示された前向きな投資意向とも整合的です。

本四半期の反発は第1四半期の修正後の需要低迷を完全に相殺するものではなかったため、年間需要は2025年の合計を下回ると予想しています。流動性ニーズや外国為替管理に関連した戦術的売却の可能性はあるものの、それらは、長期の戦略的トレンドのなかで捉えるべきものです。準備資産の管理者は今後も、金を短期的取引の対象ではなく、長期的分散投資手段として認識しています。

限定的な供給側の反応

2026年の供給は緩やかに増加する見込みです。高水準の金価格と健全な利益率によって支えられ、鉱山生産量は増加が期待されるものの、操業上の制約と新規プロジェクトの立ち上げには長い期間を要することから、増加幅は限定的とみています。

リサイクルはわずかに増加しただけで、金価格の上昇と比較すると依然低調です。下半期に、価格が一方向に大きく動いたり、経済環境が大幅に悪化するといった状況が生じたりしない限り、売却による供給の急増の可能性は低いとみられます。さらなる価格上昇への期待や、市場近辺で供給可能な在庫の不足や明らかな経済的困窮が見られないことにより、消費者は金を売却せず、保有し続けるようになります。インドにおける金を担保とした融資や、中国における古い金商品の下取りによる新しい金商品との交換も、リサイクル市場へのへの直接的な流入を減少する要因となっています。

全体として、供給は金価格上昇に反応して増加する可能性が高いものの、そのペースは緩やかなものに留まるとみています。そのため、下半期の市場見通しは、利用可能な金の急増ではなく、投資需要の強さと構成によって左右されることになるでしょう。

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