金投資需要は新たな局面を迎えました。
- 年間投資需要は、2011年の1,744トンというこれまでの記録を塗り替えました。
- 2025年、最大の成長分野となったのはETF投資で、前年比で800トン以上の需要増をもたらしました。
- 金地金・金貨投資は12年ぶりに記録を更新しました。
29 January, 2026
| トン | 2024 | 2025 | 前年同期比 変化率(%) |
|
| 投資 | 1,185.4 | 2,175.3 | 84 | |
| 金地金・金貨 | 1,188.3 | 1,374.1 | 16 | |
| インド | 239.4 | 280.4 | 17 | |
| 中国:本土 | 336.2 | 431.7 | 28 | |
| 金ETF | -2.9 | 801.2 | - | |
2025年、金投資需要の年間総額は2倍以上増加し、2,400億米ドルという驚くべき数値を記録しました。
安全な避難先や分散投資手段としての役割が引き続き重要なけん引役となりました。地政学的・地理経済学的リスクの高まりや米ドル安、割高な株価、政策金利引き下げ観測などが、今第4四半期ならびに今年1年間を通して極めて重要な役割を果たしました。
しかし、金価格の急騰が需要をさらに拡大し、特に今第4四半期は投資家たちの背中を強く押す形になりました。
10月に生じた調整局面での価格下落がその後のモメンタムを押し上げ、投資家にとっては低価格で金を買い増す好機となりました。その結果、ETFと金地金・金貨の総購入量1,141トンという下半期としての記録を達成することとなりました。
富裕層(HNWI)や機関投資家など、さらに幅広い投資家たちの投資需要は極めて旺盛な状態が続いているとの報告がありました。この不透明な需要要素は通常、OTCおよび在庫フローの需要カテゴリに反映されるもので、このカテゴリには、取引所の在庫変動、未確認の加工在庫の変動および統計残差も含まれます。
2025年のデータでは、OTC需要が市場に及ぼした実質的影響が限定的だったことが示されている一方で、OTC需要の多くが既存の在庫で満たされた可能性が高く、その結果、この2つのOTC需要構成要素は互いを大きく打ち消しあう形になりました。
予測不可能で不安定な地政学的環境に加え、成長の鈍化と緩和政策の継続を考慮すると、2026年も投資に有利な環境が続くことが予想されます。
2025年、世界全体の金を裏付けとするETFの保有量は過去最高の4,025トンに達しました。金額ベースで、年間流入量は過去最高の890億米ドルを記録しました。
今第4四半期の金価格パフォーマンスは再び、ETF購入の原因になると同時にその結果にもなりました。投資家は上昇する価格に引き付けられ、その結果生じた流入がさらに価格を押し上げました。
今期、安全な避難先としての金投資を促進した要因は主として地政学的・地理経済学的不安定性であり、これに、世界的な緊張の高まりや、さまざまな市場での金利引き下げの見通しが加わりました。
世界全体の年間ETF需要増加分(+446トン、510億米ドル)のうち、半分以上が北米ETFへの流入でした。地政学リスクという動機以外にも、AI株バブル懸念や株式市場の変動性が需要を支えることになりました。
投資家ベースの拡大に伴い、アジアのETFが地域として2番目に大きな増加(+215トン、250億米ドル)を記録しました。今年、中国の上場ファンドの保有量は2倍以上増加し(+133トン)、インドでは8ヵ月連続の買い越し(+38トン)を記録しました。同様に、日本の投資家も世界の金ETFエコシステムに多くの流入をもたらしました.
12月にインドの年金規制当局は政府部門および公的年金および非政府部門向けの国民年金制度が金・銀ETFへの投資を認めた。インド年金市場の規模を考慮すると、金ETFへの資金流入が増加する可能性がある。1
欧州の上場ファンドによる購入はかなりの量ではあったものの、アジアに比べると控えめな量に留まりました(+131トン、120億米ドル)。10月にかなり大量の流出があったことで年間合計が押し下げられましたが、大量流出は金価格の調整局面での利益確定売りと、ポートフォリオのリバランスが組み合わさった結果だと思われます。
その他の地域の上場ファンドは南アフリカの小規模な流出によって相殺されたものの9トン増となり、増加分のほぼすべてがオーストラリアの上場ファンドの堅調な購入によるものでした。
ETF保有量が記録的レベルにある一方で、歴史的解析からは成長の余地があることが示されました。長引く地政学的緊張や米国FRBの独立性に対する懸念の拡大、さらに米国の金利政策を考慮すると、今後も投資は続くものと予想されます。
さらに、株式市場の評価水準が過剰に高いことから、ポートフォリオの効果的な分散手段に対するニーズが注目されています。
420トンを記録した今期は、金地金・金貨に関しては少なくとも過去12年間で最も好調な四半期となりました。需要は、前年同期比と前四半期比の両方で約30%の大幅な増加となりました。
その結果、年間合計は2013年以来の高水準に達し、金額ベースでは1,540億ドルの過去最高を記録しました。そのうち、半分以上がインドと中国によるものです。
旺盛な需要を生み出した要因の中で、金価格の上昇が最も重要なものであったことは論をまちません。その他にも、多くの国でさまざまな要因が貢献しましたが、すべての市場に共通する支配的要因は金価格の動きでした。
インドでは、旺盛な投資意欲を背景に2四半期連続で需要が90トンを超えましたが、これは2013年以来のことです。年間需要も同様に2013年以来の高水準となり、投資総額は320億米ドルの過去最高となりました。
2024年の大半の期間において、ルピー安となったことで金価格が高騰し、モメンタム買いを後押しすることになりました。
投資目的の宝飾品消費者の一部が低マージンの金地金・金貨へと投資対象をシフトしたことが、需要増を下支えしたと思われます。投資意欲の旺盛さは、この1年間の金ETF購入の驚異的増加にも表れており、この新たな需要を捉えるために多数の新商品が上場されました。
同様に、金のオンライン購入も確実に増加し、取引高はほぼ3倍に増加しました。市場からのフィードバックによれば、この成長の背景には、幅広い事業者に支えられた投資家ベースの拡大があります。
中国の金地金・金貨への年間投資はこれまでの2013年の記録を超え、ワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズでは史上初めて宝飾品需要を上回りました。
世界的な地政学的緊張や貿易摩擦のただ中にあって、価格モメンタム以外に、1年を通して投資需要を下支えしたのは安全な避難先としての購入でした。また、中国人民銀行が相次いで買い入れを発表したことが、投資家たちを一段と勇気づけました。
一方、11月に発表されたVAT制度改革は第4四半期における新たな促進要因となり、投資志向の消費者が宝飾品の購入から投資商品へとシフトする契機となりました。
2026年も、中国の金投資は堅調を維持することが見込まれています。地政学的状況から、安全な避難先としての買いが減少することは考えられず、また国内の成長に対する懸念は、富の保全の必要性を強調する可能性があります。とはいえ、中国人民銀行が金購入を継続すれば、さらなる下支え要因になるものと思われます。
2025年に法令が改正されたことで、中国の保険会社が参入することが可能となり、金市場は長期にわたって構造的サポートを得ることになりました。2025年末までに保険会社6社が上海黄金交易所に加盟し、機関投資家にとっては新たな投資の道が開かれたことになります。
2025年、中東地域全体で個人投資への強い意欲が見られ、取引量は数年ぶりの高水準に達し、すべての市場で年間取引額が過去最高となりました。
地域的な地政学的不安定性と世界的不確実性がモメンタム主導の需要に一段と拍車をかけました。
トルコは、2025年に投資額が前年同期比で減少した唯一の市場でした。現地価格プレミアムの上昇が示すように、また富の保全および安全な避難先としての投資動機に支えられ、投資意欲は依然堅調です。しかし、インフレによる購買力低下と、価格高騰による周期的な利益確定売りのために、直近2年間の非常に高い水準と比べると投資額は減少しました。
今第4四半期は好調のうちに終了したものの、米国における金地金・金貨の年間需要増を生み出すには不十分でした。ただし比較的控えめながらも、金額ベースでの投資は8%増の70億米ドルとなりました。
このデータには、根底にある強い購買意欲が隠されています。その傾向は第4四半期に一段と顕著になり、それはイーグル金貨とバッファロー金貨の売上合計が前四半期比で2倍以上増加したことに反映されています2。
ただし、価格上昇が引き続き利益確定売りを誘引していることから、依然売り戻しが顕著で、活発な双方向市場となっています。
欧州の投資需要は4四半期連続で前年同期比が増加しており、同地域の年間需要を2023年の水準近くにまで押し上げています。また、金額ベースの需要は2022年以来の高水準となりました。価格モメンタムに加え、地政学的理由によって増大したセーフヘブンに関する懸念が購入動機となりました。
大半のASEAN市場で、金地金・金貨の購入が数年ぶりの高水準まで急上昇し、投資額も大幅に増加しました。
インドネシアでは、価格上昇に加え、経済の低迷、自国通貨の弱体化、安全な避難先としての買いが背景となり、ここ数四半期、需要が一貫して増進しています。こうした需要の強さから、宝飾品製造業者はここ数四半期、地金生産を優先し、生産能力を拡大してきました。
12月にインドネシア政府は、国内供給を確保し、国内価格を安定させることを目的として、金地金、ドーレ地金、粒金に対する段階的輸出税を導入しました3。
タイでは、年間投資額が2018年以来12年ぶりの高水準となる60億米ドルを記録しました。とはいえ、の数字は個人投資家の購入意欲の強さを十分表していません。年間を通じてオンラインアカウント取引へのシフトが見られ、現物に対する需要の一部が移行しました。
ASEANの中でベトナムだけが、この傾向に対する明白な例外でした。今期の投資需要は6四半期連続で前年同期比がマイナスとなり、2021年第4四半期以来の低い値となりました。供給上の制約もその一因でした。関係者によると、SJC(サイゴン・ジュエリー・カンパニー)のテール金地金の不足により市場がひっ迫し、すでに高騰していた国際価格に加えて、1オンスあたり550米ドルを超える懲罰的なプレミアムが国内価格に上乗せされる結果となりました。金への投資意欲の受け皿となる手段が他になかったため、24金カイリングに対する需要が増加しました。
日本では、今期、国内金価格が2万円/グラムを突破したことで投資意欲が高まりました。買いが急増したため、小売店では在庫不足が生じているとの報告がありました4。ただし在庫不足は、保有金の利益確定売りが続いたことで緩和されました。これは、高齢者が相当量の資産を保有している日本市場特有の動きです。
韓国においては、金投資が年末にかけて爆発的に増加し、ワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズ中、最も好調な四半期となりました。今期、ウォンがほぼ一貫して下落したことで、現地通貨建て価格が大幅に上昇し、モメンタム買いを一段と促進しました。
また、中央銀行が10月に、金準備の増加を検討していると発表したことで、金購入熱がさらに高まりました5。金額ベースで、年間投資額は2倍以上の30億米ドルに増加しました。
オーストラリアの金地金・金貨投資は2025年に30%以上増加しましたが、依然として2021/22年の水準には達していません。
多くの投資家を惹きつけたのは金価格の上昇でした。メディアは、金地金ディーラーの外に長い行列ができたことや、一部の小売店で在庫がなくなったことを報じました。
特に若い世代で関心が高まったことが、今年後半に現れた傾向であるとの報告がありました。
| 2024 | 2025 | 年間 前年同期比(%) 変化率(%) | 2024年 第4四半期 | 2025年 第4四半期 | 前四半期比 変化率(%) | |
| インド | 239.4 | 280.4 | 17 | 76.0 | 96.0 | 26 |
| パキスタン | 19.0 | 19.4 | 2 | 5.6 | 5.4 | -4 |
| スリランカ | - | - | - | - | - | - |
| 中華圏 | 345.7 | 444.3 | 29 | 86.2 | 122.7 | 42 |
| 中華人民共和国本土 | 336.2 | 431.7 | 28 | 83.6 | 118.7 | 42 |
| 香港特別行政区 | 1.5 | 1.9 | 31 | 0.4 | 0.6 | 71 |
| 台湾 | 8.0 | 10.6 | 33 | 2.2 | 3.4 | 50 |
| 日本 | 2.6 | 4.0 | 52 | -0.9 | 3.1 | - |
| インドネシア | 24.5 | 31.6 | 29 | 5.8 | 6.7 | 15 |
| マレーシア | 7.5 | 10.3 | 37 | 2.3 | 3.7 | 65 |
| シンガポール | 6.5 | 9.6 | 48 | 1.9 | 3.3 | 71 |
| 韓国 | 19.4 | 29.8 | 54 | 5.9 | 11.5 | 95 |
| タイ | 39.8 | 51.4 | 29 | 14.6 | 18.9 | 30 |
| ベトナム | 42.1 | 36.1 | -14 | 8.2 | 7.0 | -15 |
| オーストラリア | 11.3 | 15.2 | 35 | 3.6 | 5.3 | 46 |
| 中東 | 109.9 | 118.2 | 8 | 27.1 | 30.5 | 13 |
| サウジアラビア | 15.5 | 17.5 | 13 | 3.7 | 5.2 | 39 |
| UAE | 13.5 | 14.8 | 9 | 3.4 | 4.2 | 24 |
| クウェート | 6.1 | 6.7 | 10 | 1.4 | 1.9 | 30 |
| エジプト | 24.0 | 23.6 | -2 | 5.9 | 7.4 | 27 |
| イラン | 42.3 | 46.2 | 9 | 10.4 | 9.1 | -13 |
| その他の中東 | 8.5 | 9.4 | 10 | 2.2 | 2.7 | 22 |
| トルコ | 112.2 | 71.1 | -37 | 23.5 | 21.3 | -9 |
| ロシア連邦 | 34.4 | 35.5 | 3 | 9.0 | 9.9 | 10 |
| 米州 | 87.6 | 71.1 | -19 | 21.7 | 25.0 | 15 |
| 米国 | 77.5 | 58.0 | -25 | 18.6 | 20.9 | 12 |
| カナダ | 7.4 | 10.5 | 42 | 2.4 | 3.4 | 40 |
| メキシコ | 0.8 | 0.7 | -18 | 0.2 | 0.2 | 17 |
| ブラジル | 1.8 | 1.9 | 6 | 0.5 | 0.6 | 20 |
| 欧州(CISを除く) | 67.0 | 124.1 | 85 | 22.9 | 38.6 | 68 |
| フランス | -2.6 | -0.7 | - | -0.5 | 0.7 | - |
| ドイツ | 16.8 | 44.8 | 167 | 8.7 | 13.6 | 56 |
| イタリア | - | - | - | - | - | - |
| スペイン | - | - | - | - | - | - |
| 英国 | 10.3 | 18.5 | 79 | 2.2 | 7.1 | 225 |
| スイス | 16.9 | 25.0 | 48 | 5.4 | 6.9 | 28 |
| オーストリア | 2.1 | 4.2 | 98 | 0.8 | 1.4 | 64 |
| その他の欧州 | 23.3 | 32.3 | 38 | 6.3 | 8.9 | 41 |
| 小計 | 1,168.7 | 1,352.0 | 16 | 313.3 | 408.7 | 30 |
| その他・在庫変動 | 19.7 | 22.2 | 13 | 11.1 | 11.7 | 6 |
| 世界合計 | 1,188.3 | 1,374.1 | 16 | 324.4 | 420.5 | 30 |
出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル