2025年に大きく乖離した宝飾品需要の数量指標と金額指標
- 宝飾品の年間消費量は過去5年で最低の1,542トンまで低下しました。
- 対照的に、需要は1,720億米ドル(+18%)の過去最高を記録しました。
- 今第4四半期の需要441トンは、第4四半期としての最少記録でした。
29 January, 2026
| トン | 2024 | 2025 | 前年同期比 変化率(%) |
|
| 世界合計 | 1,866.9 | 1,542.3 | -18 | |
| インド | 563.4 | 430.5 | -24 | |
| 中国 | 479.1 | 360.1 | -25 | |
世界中のあらゆる市場で、宝飾品需要が前年同期比でマイナスになりましたが、2025年を通して金価格が幾度も過去最高記録を更新したことを考えれば驚くことではありません。
一方、金額ベースでの需要は逆の動きを示しており、金価格の上昇が数量の減少を上回ったため、すべての市場で増加が見られました。
2025年、高騰した金価格が世界中の宝飾品消費者の購買力を押し下げたことは間違いありません。ただし、宝飾品に対する購買意欲まで削ぐことはなく、そのことは、2025年に金額ベースの需要が大きく増加し、金が消費者支出全体に占める割合が上昇したことで裏付けられています。
中国の金宝飾品需要において、今第4四半期は低調だった1年を締めくくる低調な四半期となりました。VAT制度改革や経済の低迷、例年より遅かった春節に、記録的金価格が加わったことで、需要量は15年以上ぶりの低水準まで落ち込みました。
金宝飾品に対する年間総支出額は390億米ドル(前年同期比8%増)で、2013年の430億米ドルに次ぐ2番目の記録となりました。
金価格の上昇以外に、(国内経済の不確実性や地政学的緊張の高まりによって形成された)消費者の支出に対する保守的姿勢が金宝飾品需要の低迷を引き起こしました。
業界関係者によると、11月のVAT制度改革により金宝飾品の販売に対する税負担が増えたことで需要が冷え込み、金投資商品へのシフトが促進されたとのことです。
軽量の硬質純金宝飾品など手頃な価格の商品に対する消費者の嗜好は相変わらず根強いものがあります。こうした商品は手頃な価格で若い消費者にアピールする一方で、小売業者に利益をもたらします。しかし、専門店で販売される重厚な伝統的金製品などの高額商品に対する需要は、市場の最上位層が持つ購買力の底堅さを証明しています。
一方、2025年には、(古い宝飾品を新しい宝飾品と交換し、追加工賃を支払う)下取りが、価格障壁を乗り越える手段として人気を集めました。ワールド ゴールド カウンシルでは、この傾向は金宝飾品に対する消費者の関心が高まってきた兆しであると見ています。
2026年も購買力が主要な制約要因となり、先頃実施されたVAT制度の改革が投資志向の消費者を宝飾品から金地金へと向かわせる持続的要因になる可能性があります。
中国経済の今後の見通しも同じく重要です。予想されている利下げや経済支援策によって信頼の回復や裁量支出の増加が促されても、外部からの圧力や国内情勢の不確実性が成長を阻害し、金宝飾品需要を押し下げる可能性があります。
業界が過去の過剰供給に適応するにつれて、業界再編が続くものと思われます。硬質純金宝飾品は相対的な強さを維持すると見られる一方で、卓越した職人技やテーマ性のあるデザインは若い世代の購買意欲に訴えるでしょう。1月に小売業者が在庫を補充することから、第1四半期の需要は季節的要因によって増大する可能性があります。2026年は春節が遅いため、購入が2月にずれ込み、婚礼関係の購入が追加の下支え要因となるでしょう。
今第4四半期、祝祭と婚礼に関連する需要により宝飾品の購入は前四半期比で増加しましたが、記録的金価格の必然的結果として、前年同期比は大幅に落ち込みました。ただし金額ベースでは、今期の金宝飾品支出額は過去最高の190億米ドルとなり、年間合計も初めて490億米ドルに達しました。
インドにおける金宝飾品に対する購買意欲は依然、非常に旺盛ですが、一般に消費者の予算は限られており、そのため購入可能な金の量に制約がかかり、特に金の国内価格が74%上昇した2025年はそれが顕著に見られました。
10月に、消費者が金価格の下落を最大限に利用したことで婚礼関連の購入の前倒しが生じ、需要が押し上げられました。その後、価格が絶え間なく上昇し続けたことで、需要増は沈静化しました。
特に北部主要都市の若者の間で14金宝飾品の人気が高まった一方で、他の地域では、長期的な富の保全という金保有の意義を希薄なものにすることから、低カラット金宝飾品に対する抵抗が残っています。
金の販売量が減少したにもかかわらず、小売業者による販売促進キャンペーンのおかげで、組織化された小売分野の業績は伸び、収益も増加しました。
金宝飾品のマネタイゼーション(売却による現金化)が増加するのに伴い、金宝飾品の交換が依然、大きなトレンドとなっています。11月末時点で、インドの銀行による金宝飾品を担保とする個人向け融資の総額が前年同期比125%増の3.6兆インド・ルピー(400億米ドル)に達しました。
高インフレ率や、不安定な国内および地域の地政学的状況、消費者マインドの冷え込みなどを背景に、トルコの金宝飾品年間需要は2020年以来の低水準まで落ち込みました。
年間の金宝飾品消費額は前年同期比で14%の増加でしたが、世界全体のパフォーマンスを下回りました。
トルコの高インフレ環境は金宝飾品業界にとってはダブルパンチとなっています。宝飾品加工業者が投入原価の高騰に直面し、それがマージンの増加と、消費者にとっての価格上昇に結び付く結果になりました。最大で300米ドル/オンスに達したローカルプレミアムは、今期における大きな逆風でした。
中東の各市場は、量の大幅な減少と価格の高騰という世界的傾向に沿った動きを示しました。
サウジアラビアの場合、金宝飾品にかかる15%のVATのために、記録的金価格がもたらす影響が増幅され、投資商品へのシフトが促進される結果になりました。同じような動きはUAEでも見られ、地域的緊張の高まりを受けて、利マージンの投資商品に注目が集まりました。
イランの需要は、量ベースで前年比わずか1%減と比較的安定していた点が注目されます。この底堅さは、地政学的緊張が高まった環境における、(利用可能なあらゆる形式の)安全な避難先に対するニーズを反映したものですが、価格上昇によって購買力が低下したため、最終的に需要は抑制されることになりました。
世界的トレンド同様、2025年の米国の宝飾品需要は価格上昇の影響を受ける結果になりました。ただし、量の減少は、28%増の130億米ドルに達した支出の陰に隠れてあまり注目されませんでした。
現地調査では、これは低カラット商品への顕著な移行によるのではなく、単に購入された純金の量が減ったためであることがわかりました。事実、K字型経済は、高品質・高カラットの高級宝飾品に対する健全な需要に反映されているように見えます。また、購買力を制約する要因は、可処分所得が大きい市場セグメントにとっては大した問題ではありません。
欧州では、金宝飾品の量が3年連続で減少し、年間合計はコロナ禍の2020年以来の低い水準となりました。
一方で、金額は5年連続の増加となり、過去最高を更新して70億米ドルに達しました。
ワールド ゴールド カウンシルが金需要データを個別に公表しているASEAN諸国はすべて、記録的金価格に対して似た反応を示しています。つまり、需要が数年ぶりの低水準まで低下している一方で、金額は大幅に増加しています。
自国の経済環境に問題を抱えるインドネシアは他のASEAN諸国に後れを取っています。生活費の高騰が金宝飾品に対する購買力を削ぐことになっています。そのため、(特に14金以下の)低カラット商品への移行が顕著に見られました。
2025年、日本は底堅さを示した宝飾品市場のひとつでした。量的には「わずか」11%のマイナスで、金額的には29%という平均以上の伸びを示し、これまでの記録を更新して15億米ドルに達しました。
国内需要を支えたのは、準投資商品の「資産性宝飾品」(一般に、デザインを最小限に留めることで、マークアップが比較的小さい、装飾性を抑えたチェーン)に対する需要です。
韓国では、金宝飾品の年間需要が1%減少しただけであったにもかかわらず、価格高騰によって低カラット宝飾品へと需要が移ったことにより、記録的低水準となりました。ただし、金額面では39%の増加となり、12億米ドルの過去最高を記録しました。
リテール投資市場が盛況であるにもかかわらず、オーストラリアの金宝飾品の量は2025年に22%のマイナスとなり、ワールド ゴールド カウンシルの5年間データシリーズで最低となりました。金額は11%増加しましたが、2023年のレベルには届きませんでした。
| 2024 | 2025 | 年間 前年同期比(%) 変化率(%) |
2024年第4四半期 | 2025年第4四半期 | 前四半期比 変化率 (%) |
|
| インド | 563.4 | 430.5 | -24 | 189.8 | 145.3 | -23 |
| パキスタン | 17.5 | 15.8 | -10 | 4.6 | 3.9 | -15 |
| スリランカ | 5.8 | 4.1 | -28 | 1.3 | 0.9 | -27 |
| 中華圏 | 511.3 | 386.1 | -24 | 114.2 | 89.0 | -22 |
| 中華人民共和国本土 | 479.1 | 360.1 | -25 | 106.1 | 81.9 | -23 |
| 香港特別行政区 | 27.9 | 22.1 | -21 | 7.1 | 6.2 | -13 |
| 台湾 | 4.2 | 3.8 | -10 | 1.0 | 0.9 | -12 |
| 日本 | 15.1 | 13.5 | -11 | 4.2 | 4.0 | -5 |
| インドネシア | 22.8 | 16.6 | -27 | 7.7 | 5.4 | -30 |
| マレーシア | 11.5 | 10.8 | -6 | 2.6 | 2.4 | -9 |
| シンガポール | 6.8 | 6.0 | -13 | 1.6 | 1.4 | -11 |
| 韓国 | 11.7 | 11.5 | -1 | 2.8 | 2.4 | -13 |
| タイ | 9.1 | 7.8 | -14 | 2.9 | 2.3 | -18 |
| ベトナム | 13.2 | 10.6 | -20 | 3.3 | 2.4 | -29 |
| オーストラリア | 8.2 | 6.4 | -22 | 2.3 | 1.7 | -26 |
| 中東 | 171.2 | 153.1 | -11 | 43.4 | 34.9 | -20 |
| サウジアラビア | 49.1 | 44.0 | -10 | 12.3 | 8.9 | -28 |
| UAE | 34.7 | 29.4 | -15 | 8.8 | 7.5 | -15 |
| クウェート | 12.3 | 10.4 | -15 | 3.5 | 2.8 | -19 |
| エジプト | 26.1 | 21.5 | -18 | 6.3 | 5.1 | -18 |
| イラン | 26.7 | 26.5 | -1 | 6.8 | 5.4 | -20 |
| その他の中東 | 22.3 | 21.2 | -5 | 5.7 | 5.0 | -11 |
| トルコ | 40.9 | 32.8 | -20 | 11.9 | 7.7 | -35 |
| ロシア連邦 | 39.4 | 36.5 | -7 | 11.6 | 11.0 | -5 |
| 米州 | 174.8 | 158.4 | -9 | 61.3 | 53.4 | -13 |
| 米国 | 131.9 | 117.3 | -11 | 47.0 | 40.0 | -15 |
| カナダ | 13.8 | 12.9 | -7 | 5.5 | 5.0 | -10 |
| メキシコ | 13.5 | 12.8 | -5 | 3.7 | 3.5 | -5 |
| ブラジル | 15.6 | 15.4 | -1 | 5.1 | 5.0 | -2 |
| 欧州(CISを除く) | 67.2 | 60.6 | -10 | 28.8 | 24.9 | -13 |
| フランス | 13.8 | 11.4 | -17 | 5.9 | 4.7 | -21 |
| ドイツ | 9.5 | 8.5 | -11 | 4.1 | 3.3 | -18 |
| イタリア | 17.8 | 16.2 | -9 | 9.0 | 7.7 | -14 |
| スペイン | 8.6 | 8.3 | -4 | 2.6 | 2.5 | -6 |
| 英国 | 17.4 | 16.3 | -7 | 7.2 | 6.7 | -7 |
| スイス | - | - | - | - | - | - |
| オーストリア | - | - | - | - | - | - |
| その他の欧州 | - | - | - | - | - | - |
| 小計 | 1,689.9 | 1,361.3 | -19 | 494.1 | 393.0 | -20 |
| その他・在庫変動 | 197.0 | 181.0 | -8 | 53.7 | 48.5 | -10 |
| 世界合計 | 1,886.9 | 1,542.3 | -18 | 547.9 | 441.5 | -19 |
出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル