2025年の総金供給量は、鉱山供給量とリサイクルが再び若干増となったため、前年同期比で1%の増加となりました。
- 年間鉱山生産量は前年同期比では微増でしたが、3,672トンの過去最高となりました。
- 2025年、世界のヘッジポジション正味残高は大きく減少して約120トンでした。
- 年間のリサイクル金供給は、金価格が高騰したにもかかわらず、わずか3%の増加に留まりました。
29 January, 2026
| トン | 2024 | 2025 | 前年同期比 変化率(%) |
|
| 総供給量 | 4,961.9 | 5,002.3 | 1 | |
| 鉱山生産量 | 3,650.4 | 3,671.6 | 1 | |
| 産金会社のネットヘッジ | -53.8 | -73.6 | - | |
| リサイクル金 | 1,365.3 | 1,404.3 | 3 | |
2025年の金の総供給量は、過去最高となった鉱山生産量とリサイクル供給量の増加により、前年同期比1%増の5,002トンとなり、1970年以降のワールド ゴールド カウンシル年間データシリーズ中で最高となりました。ただし、推計では、今年の鉱山生産量は過去最高の3,672トンに達すると見込まれていますが、この数字は今後修正される可能性があり、従来の記録が破られたと断言するのは早計です。
初期段階の推計でも、産金会社のネットヘッジポジションが今年1年で大幅に減少したことが示されていますが、これは生産者が満期を迎えた契約を履行し、より長期のヘッジを買い戻したためです。
現在の推計では、今年の鉱山生産量はわずかながら増加して前年同期比1%増の3,672トンとなり、2018年に記録された3,663トンをわずかながら上回ると予想されています。しかし、今後生産量の修正が見込まれていることから、2025年が鉱山生産量の新記録達成の年になるかどうかはまだ断定できません。例年通りワールド ゴールド カウンシルでは、2025年第4四半期に関するデータを、大半の企業の四半期報告書発表の前に作成しており、最終的数字は現在のワールド ゴールド カウンシルの推計と異なることになるでしょう。ワールド ゴールド カウンシルでは通常、鉱山供給データの修正を最近の数四半期に集中していますが、インドネシア政府が発表した修正済み鉱山生産量データでは、鉱山生産量の推計値が2015年と2018年まで遡って、それぞれ7トン増と5トン増に変更されました1。
今第4四半期、地域としての成長はアフリカとアジアが最も著しく、いずれも前年同期比で3トン増加しました。顕著な成長を示した国は次の通りです。
一部の国では、事業や品位に起因する理由から、金鉱山生産量が前年同期比で大幅なマイナスとなりました。
2026年、2つの大規模鉱山の生産が回復することで、生産量が増加する可能性があります。インドネシアのグラスベルグ鉱山は、2025年第3四半期に死亡事故が起きましたが、その後も生産拡大を続ける見通しで、また先日発表されたバリック社とマリ政府との合意により、採掘が再開され、年間を通じて生産量の回復が見込めることになりました2。メタルズ・フォーカスの鉱山生産データには、零細・小規模金採掘(ASGM)の推計値が含まれています。金価格の大幅な上昇を考えれば、2026年もこの供給源からの寄与が大きく増えることが予想されます。
とはいえ、鉱山生産量の成長を過大評価することは避けねばなりません。2025年に生産量は過去最高を更新したものと思われ、2026年もさらなる増加の可能性がありますが、世界の金鉱業は過去10年ほどの間は目を引くような成長を遂げられず苦戦してきました。過去10年間の鉱山生産量の平均年間成長率は1%未満であり、この業界が短期間に生産量を増やすことは容易ではないとワールド ゴールド カウンシルでは考えています。
金鉱業の全維持生産コスト(AISC)の平均値は、第3四半期に前年同期比で9%増の1,605米ドル/オンスとなりました。1%と比較的小幅なAISCの四半期ごとの上昇率は、通常、鉱山生産量が年間で最も多くなるのが第3四半期と第4四半期であるという季節要因によって部分的に説明できます。
持続的な資本支出の増加に投入コストの増加や金価格の上昇に伴うロイヤルティ支払額の増加が加わり、AISCの前年同期比上昇につながりました。
2025年、産金会社ヘッジポジション正味残高の平均は、各四半期で減少となったことで、年間合計が74トン減少して約120トンになると推定されています。鉱山会社は満期を迎えたヘッジを履行し、またヘッジを組み替えたりあるいは買い戻したりしました。過去1年間に新たなヘッジが行われたケースでは、業界関係者との会話から、プットオプション購入に一段と集中しており、産金会社は将来の生産に対するフロア価格を確保するために費用を拠出する用意があることがわかりました。歴史的に見ると、価格保護のための資金はコールオプションの売却によって調達するのが常套手段であることから、鉱山会社が金価格の上昇による恩恵を受ける可能性は限られるかまったくありませんでした。したがって、これは行動面における重大な変化です。
約120トンという産金会社全体のヘッジポジションは、2013年以来の低水準であり、2000年前後に3,000トンを超えた未決済ポジションに比べれば微々たる量です。過去25年間で金のヘッジ戦略は大きく変化し、現在では広範な利用が戻る兆しは見当たりません。ポジションのほぼ半分は、ひとつの国(オーストラリア)の鉱山によるものです。
金価格の上昇はリサイクルの増加につながる傾向があり、世界中で記録的な水準にある金価格を背景に今第4四半期のリサイクルが前年同期比で+2%、前四半期比で+7%の366トンに達したことは驚くに当たりません。これは、新型コロナウイルスパンデミックの影響で金価格が急騰した2020年第3四半期以来、単一の四半期としては最大のリサイクル供給量となります。通年のリサイクル供給量は2%増の1,404トンで、2012年以来の高水準となりました。
金の年間平均価格が44%上昇したことを考えると、リサイクル量がそれ以上の増加にならなかったのは驚きです。その理由は、一部の主要市場における金保有者の行動によって説明できます。2025年、リサイクル供給の変化に際立ったパターンが見られました。米国や欧州、日本などの先進国市場では、スクラップ供給量が前年同期比で順調に増加しましたが、インドや中東、東南アジアなど新興市場では減少しました。主な新興市場の中でリサイクル量が前年同期比でプラスになったのは中国だけでした。
地域別パフォーマンスを詳細に見ると、リサイクルの前四半期比上昇分の大半は東アジアによるものであり、また増加量の大部分は中国によるものであることがわかります。記録的金価格を除けば、国内景気の低迷とVAT制度改革の影響が重なって、リサイクル量の増加を招いたと思われます。業界関係者との会話からは、中国の宝飾品の小売り/製造ネットワークの統合が進み、在庫調整が加速していることが見えてきました。
大きな消費者市場を持つインドは、リサイクルが引き続き低調だったことで、南アジアの前年同期比および前四半期比を低下させる結果になりました。古い宝飾品を新しい物に交換する動きは依然として非常に活発であり、また、高値を利用して金宝飾品を融資の担保として差し入れることが続いています。この2つの傾向により、スクラップ用に売却される金の量が減少しています。
中東や東南アジアなどその他の新興市場では総じて、売却が前年同期比で横ばいないし減少となりました。さらなる金価格上昇による利益への期待に、イランをはじめとする各国の経済的/政治的混乱および代替投資手段の欠如とが加わったことが、リサイクル供給を押し下げる結果になりました。
先進国市場でリサイクル供給の前年同期比が上昇したことは、大半の新興市場の消費者行動から大きくかけ離れた現象でした。欧州では、経済活動の停滞や経済成長に不利な人口構成、長年にわたって蓄えられた宝飾品在庫などがリサイクル供給量を押し上げたものと思われます。日本でも人口構成は一定の役割を果たしていますが、円安と米ドル建て金価格が高水準に達したことで、円建て金価格が極めて高い水準に押し上げられ、古い宝飾品、特に相続した宝飾品が売却されています。米国では、金保有者は高価格による利益確定売りの恩恵を受けているようです。消費者が苦境にある兆候はほとんど見られませんが、富と所得配分の格差(いわゆる「K字型」経済)が、低所得層による売却を促進している可能性があります。
2026年もリサイクル量は、世界各地の金価格から期待されるレベルには届かない可能性があるものの、堅調に推移するものと思われます。2026年のリサイクルおよび供給全体の詳細な見通しについては、「今後の見通し」をご覧ください。