中央銀行

30 October, 2025

今期、中央銀行の購入ペースが加速しました。

  • 今期、中央銀行による買い越しは220トンで、前四半期比で28%増加しました1
  • 年初来需要は直近3年間を下回りましたが、2021年までの平均値は大幅に超えました。
  • 今期、最も多くを購入したのはカザフスタン国立銀行で、ブラジル中央銀行は2021年以来の購入でした。
トン 2024年
第3四半期
2025年
第3四半期
前年同期比
変化率(%)
中央銀行
およびその他機関
199.5 219.9 10

中央銀行は今期も金の需要を支えた柱であり、購入量が低下した過去2四半期の後、買いペースを上げました。今期、中央銀行の買い越しは推計220トンであり、第2四半期より28%多く、過去5年間の同四半期平均を6%上回りました。

今年の金価格の大幅な上昇(年初来で約50%上昇し2新記録を達成)が抑制要因になった可能性があるものの、直近の四半期に見られた需要の回復は、価格上昇にもかかわらず中央銀行が戦略的に金の備蓄を増やし続けていることの証左です。

このことは、ワールド ゴールド カウンシルのCentral Bank Gold Survey 2025の調査結果を裏付けるものであり、回答者は今後1年で金準備高を増加させる強い意志を示しています。

年初来ベースで、中央銀行の金準備高は634トン増加しました。これは過去3年間の四半期平均を下回りますが、2021年までの平均である400~500トン3は優に上回っています。今年の年間需要が過去3年間の水準に達する可能性は次第に低下していますが、総需要としては依然、極めて健全なレベルを保っています。

 

図7:今年も好調な中央銀行の金需要

中央銀行の年間金需要(トン)*

GDT Q3 2025: Central Banks Chart 1 - [JP]

*データは2025年9月30日現在。
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

今期も金の主要な買い手は例年通り新興国の中央銀行でしたが、これに加え、長らく取引を控えていた後に市場に復帰した中央銀行がいくつかありました4

  • カザフスタン国立銀行が今期購入量が最も多かった中央銀行であり、金準備高は18トン増の324トンになりました。
  • ブラジル中央銀行(前回の金購入は2021年7月)は、9月に金準備高を15トン増やし、合計が145トンに達したと発表しました。
  • トルコ中央銀行は金を着実に積み増していて、公式(中央銀行と財務省)の金準備高は今期、7トン増の641トンになりました。
  • グアテマラ銀行は今期、金準備高を6トン、率にして91%増加させ合計13トン(総準備高の5%)としました。
  • このほか、今期の金購入を公表した中央銀行は次の通りです。イラク中央銀行(6トン)、中国人民銀行(5トン)、チェコ国立銀行(5トン)、ガーナ銀行(4トン)、アゼルバイジャン国家石油基金(4トン)、ブルガリア国立銀行(2トン、2026年のユーロ導入に伴うECBへの拠出金の一部として5 )、インドネシア銀行(2トン)、フィリピン中央銀行(2トン)、キルギス共和国国立銀行(1トン)、セルビア国立銀行(1トン)。
  • 購入の規模や幅とは対照的に、ウズベキスタン中央銀行(3トン)とカタール中央銀行(1トン)の2行だけが今期、金準備高の減少を発表しました。

ポーランド国立銀行(NBP)は5月以降購入を手控えていますが、年初来の金購入は今期も最多でした。NBPは金準備高の増加を続ける意思を固めており、そのことは外貨準備高に占める金の割合を20%から30%に引き上げるという目標に表れています6。これは、同行の金積み増し計画が完了していないことを示していますが、同時に「購入の規模およびペースは市場の状況による」ことも明らかにされた。現在、NBPが保有する金は515トンで、総準備高に占める割合は24%です。

 

図8:取引を控えていた時期があったにもかかわらず今年も最大の買い手はポーランド国立銀行

中央銀行が公表した年初来の金需要(トン)*

GDT Q3 2025: Central Banks Chart 2 - [JP]

*データは2025年9月30日現在(入手可能な場合)。
出所:IMF、各国中央銀行、ワールド ゴールド カウンシル

今第3四半期の需要と入手可能な公表済み月間統計の数字を組み合わせた上で、ワールド ゴールド カウンシルでは、今期需要の66%が未公表であると推測しています。これは、2022年以降続く傾向です。この推測値は、今後遅れて開示される情報によっては、下方修正される場合があります。

今後については、数量は価格水準に多少左右されますが、第4四半期も買い越しは続くと予想しています。各国中央銀行の積み増しが、ここ数年に比べて低下することはほぼ間違いありませんが、それでも需要は過去の平均を大きく上回っています。準備資産の管理者にとって、金保有の戦略的意義が依然として最も重要であることを示しています。詳しくは「今後の見通し」セクションをご覧ください。

Footnotes:

1ここに示された中央銀行の需要には、発表済みの変化量と、未発表の購入量の推定値が含まれている。そのため、公的に発表された変化量のみを含むワールド ゴールド カウンシルの中央銀行月次統計とは異なっている。

22025年9月30日のLBMA金価格午後決め値に基づく。

32010年~2021年の年間平均。

4各国のデータは、本稿執筆時点で入手できた公表済みの数値に基づいたものである。さらにデータが公表された場合は改訂することがある。

5ブルガリア国立銀行(BNB)は、間近に迫ったユーロ導入との関係で金を購入した。

6Polish central bank increases gold holdings target to 30% of reserves, mining.com

著作権およびその他の権利について [+]著作権およびその他の権利について [-]