テクノロジー
30 April, 2025
- 同期のテクノロジー用途の金需要は、前年同期並みの80トンでした。
- エレクトロニクス需要は、引き続きAI関連の用途が支えとなって、前年同期比2%増の67トンでした。
- これを相殺するかたちで、その他産業用途の金需要は減少し、歯科需要の長期的な減少傾向も継続しました。
トン | 2024年 第1四半期 |
2025年 第1四半期 |
前年同期比 | |
テクノロジー | 80.2 | 80.5 | 0 | |
エレクトロニクス | 66.0 | 67.0 | 2 | |
その他産業用途 | 11.9 | 11.3 | -5 | |
歯科用途 | 2.3 | 2.1 | -6 |
2025年第1四半期の産業用途の金需要は、安定的に推移しました。しかし世界各地での関税の導入をめぐる不確実性が、近い将来に同分野に大きなボラティリティをもたらす可能性があります。エレクトロニクス製品について、関税の回避を狙った極東から欧米への出荷の前倒しが確認されています。また家電製品市場でも、価格が上昇する前の駆け込み購入による需要の回復がありました。本稿執筆時点で、一部のエレクトロニクス機器は追加関税を免れるようですが、この状況は変化する可能性が高く、同分野の不確実性とボラティリティが増しています。また、エヌビディア1やTSMC2といった大手半導体メーカーが、米国内の製造施設を稼働することを発表しています。
この不確実な状況で先行きを明確に予想することは困難であり、今後、需要データが修正される可能性が高いかもしれません。
エレクトロニクス
第1四半期のエレクトロニクス分野の金需要は前年同期比で2%増加しました。AI関連のアプリやデバイスの需要が、中国での新製品の発売に支えられて好調を維持しました。米国半導体工業会(SIA)も、世界全体で1月と2月の前年比の売り上げが好調だったことを報告しました3。しかし、メーカーは記録的な金価格の圧力を感じています。ワールド ゴールド カウンシルの現地調査によると、原材料費の削減方法を緊急の課題として模索している企業もあるようです。たとえばプリント基板(PCB)分野では、一部の半導体メーカーが、コスト削減のために金属レイヤの配合を最適化することを検討しているようです。
今四半期、発光ダイオード(LED)の金使用量は小幅に増加しました。パネルや消費者向けデバイスのメーカーが、関税による混乱を緩和するために在庫を積み増したことが、その一因となりました。しかし、これは一時的なものと思われます。第2四半期以降は生産能力が削減される可能性があるためです。バイオセンサー、高度な自動化システム、ビッグデータなど、センサー用途の需要は好調を維持しています。
今期はAI関連の用途がメモリチップと半導体の成長を牽引しました。中国と米国でAIサーバーメモリなどテクノロジー用途の需要が持続したことが、成長の鍵となりました。AI搭載のスマートフォンやPCが発売され、2025年末までに普及率が約30%に達する可能性があることから、この傾向は第2四半期も続くはずです。これとは別に、NANDフラッシュメモリ市場では在庫が健全な水準まで下がり、ここ最近の供給過剰に改善が見られました。
ワイヤレス分野は、第1四半期に小幅な需要減少となりました。サプライチェーンの調整により在庫水準が下がり、同分野の受注はほぼ前年並みでした。家電メーカーは慎重な予測を維持していますが、WiFi-7の導入が続いていることが、今後の四半期のワイヤレス需要を支えるでしょう。WiFi-6から移行する際に、ユニットあたりのパワーアンプを大幅に増やす必要があるからです。低軌道衛星(LEO)など、その他のワイヤレスインフラ分野の需要は関税の影響が小さい可能性があり、このことも同分野の需要の希望の光です。
最後に、今期のプリント基板(PCB)分野は成長を記録しました。例年、第1四半期のPCB分野は季節的に低調ですが、家電メーカーからの駆け込み注文とAI用途の継続的な強さが、堅調な需要を支えました。しかし全体的な市場センチメントは警戒感を増しています。
総計レベルでは、世界の主要エレクトロニクス製品加工拠点4カ国のうち3カ国で、第1四半期の金需要が前年並みか、前年を上回りました。日本は19トン(1%増)、韓国は6トン(増減なし)、中国本土および香港は19トン(5%増)でした。一方、米国は17トン(1%減)に減少しました。
その他の産業用途と歯科用途
その他の産業および装飾用途(主に金メッキ製品や宝飾品、インドの伝統衣装に使用される金糸)で使用された金は、今期、前年同期比で5%減少しました。一方、歯科用途の金使用量は引き続き減少し、トンベースで前年同期比6%減の2トンでした。