中央銀行
30 April, 2025
- 中央銀行の第1四半期の買い越しは合計244トンでした。1
- ポーランド国立銀行が金購入を加速させました。
- 最近の数四半期と同様に、売却量は控えめでした。
トン | 2024年 第1四半期 |
2025年 第1四半期 |
前年同期比 | |
中央銀行およびその他機関 | 309.9 | 243.7 | -21 |
中央銀行の金需要は第1四半期も引き続き目覚ましく、世界の公的金準備が244トン増加しました。前四半期と比べると需要はかなり減少しましたが、絶対値では依然として健全な水準であり、過去5年間の同一四半期平均を24%上回ります。需要が極めて高い水準だった過去3年間の平均と比べても、9%下回るに過ぎません。
今四半期は不確実性が急激に高まり、それによって金価格が過去最高値まで高騰したことが、金に対する中央銀行の関心をさらに高めたと思われます。ワールド ゴールド カウンシルが実施した2024年中央銀行金準備サーベイでは、金保有の主な理由として、価値の保全としての役割と、危機時の金のパフォーマンスが強調されました。そして第1四半期の混乱した状況で、その強みが発揮されました。このことが金の高騰をさらに後押ししました。
今期は、最近活発な動きを見せてきた新興国の中央銀行に、購入と売却の両方が集中しました。2
- 昨年の購入量が首位だったポーランド国立銀行が、今期もさらにペースを速めて金購入の先頭を走りました。同行は今期、昨年の合計金需要(90トン)の54%に相当する49トンを追加しました。これにより、同行の合計金保有量は497トン(総準備高の21%)まで増加しました。
- 中国人民銀行は、第1四半期に金準備を13トン追加したことを報告しました。その結果、公表済みの金準備は今期末時点で2,292トンに増加し、準備資産全体に占める金の割合が6.5%に達しました。
- カザフスタン国立銀行は今期6トンを追加し、公的金準備は291トンに増加しました。4月初旬、カザフスタン国立銀行のアリヤ・モルダベコワ副総裁はブルームバーグに、不確実性が収まり価格が安定するまで、金の売却を控えると話しました。
- チェコ国立銀行の金準備は第1四半期に5トン増加しました。同行は近年、着実に金を積み増しており、今期末の金保有量は56トンと、2021年末時点の4倍以上になりました。
- インド準備銀行(RBI)は第1四半期に3トンを追加しました。RBIは、2024年には12月を除いて毎月金を購入しましたが、それに比べると、ここ数カ月は一貫性が薄れています。同行の3月末時点の金保有は880トンで、準備資産全体の12%を占めています。
- トルコ中央銀行3は今期も主な金の買い手であり、本稿公表時点で入手可能なデータに基づくと、4トンを追加しました。
- 中東の中央銀行も引き続き金への関心が高く、カタール(3トン)とエジプト(1トン)がいずれも第1四半期に金準備を増やしました。
- アゼルバイジャンのソブリンウェルスファンドである国家石油基金(SOFAZ)は、今期中に金準備を19トン増加させ、165トンとしました。現在、金はSOFAZのポートフォリオの26%を占めています。
- 今期の売却は控えめで、ロシア中央銀行(3トン)と、CIS加盟国であるウズベキスタンとキルギス共和国の中央銀行(それぞれ15トン、2トン)のみでした。
最近の四半期と同様に、公表済みの購入量は第1四半期の中央銀行の需要の22%にとどまっており、IMF IFSのデータでは捉えられない広範な購入意欲があることがうかがわれます。 理由として 、報告の遅れや中央銀行以外の公的機関による購入など、いくつかの要因が考えられます。
金供給の逼迫を受けて、今期は中央銀行による貸し出しが増えたという事例証拠もあります4。 米国政府の新たな関税政策をめぐって不確実性が高まる中、ニューヨーク商品取引所(COMEX)への金の流入が急増したことに反応し、貸出金利が急騰しましたが、今期末には通常の水準に戻りました。
貸し出し行為は金の所有権の変更ではなく、金の移動を表すため、ワールド ゴールド カウンシルの需要推計には含まれていません。
また、第1四半期の混乱を受けて、中央銀行による金の保管というトピックに改めて関心が集まりました5。 信頼感が低下するにつれ、米国にある金の本国輸送を求める声が上がりましたが、一部の中央銀行は保管方針の変更を否定しています6。
過去3年の大量購入を経て、全体的な買い越しトレンドは16年目に入りました7。では、中央銀行の金需要はこれからどうなるのでしょうか。ワールド ゴールド カウンシルでは、高いレベルの不確実性によって、今後も外貨準備の重要な構成要素としての金の役割が続くと予想し、このことが短期的な需要を支えると見ています。詳細については、「今後の見通し」セクションをご覧ください。