中央銀行

31 July, 2025

今期は需要減少も中央銀行の金購入意思は固い

  • 第2四半期における中央銀行の購入量は正味166トンでした1
  • ポーランド国立銀行は今期も購入量で首位に立ちました。
  • ワールド ゴールド カウンシルが最近実施した中央銀行サーベイによると、今後1年間は金を買い増す意欲が依然として強いことがわかります。
トン 2024年
第2四半期
2025年
第2四半期
前年同期比
変化率(%)
中央銀行およびその他
機関
211.5 166.5 -21

中央銀行の金需要は第2四半期も166トンと旺盛でしたが、前四半期比で33%減少し、需要は2期連続で低下しました。四半期需要としては2022年第2四半期以降で最も低い水準ですが、購入量が急上昇する前の2010年から2021年の間に一般的であった四半期の平均水準を41%上回っています。上半期の合計購入量は415トンで、2024年上半期(525トン)より21%少なく、上半期の合計購入量としては2022年以降最も低い水準でした。経済環境と地政学的環境が不安定化する中で、今期の金価格は高値を維持しました。以前述べたように、中央銀行は、通常は戦略的な金購入者ですが、金の価格水準にまったく無関心というわけではありません。したがって、年初来、金が26%高騰し、最高記録の水準に達していることも、中央銀行による購入量低下の一因になっている可能性があります2。しかし、価格高騰であっても金の買い増しを継続する姿勢は、この不確実性の中で戦略的資産としての金を好意的に見ていることの表れと言えるでしょう。

 

図8:今期、再び低下したものの依然として旺盛な水準にある中央銀行の需要

中央銀行の四半期需要、トン*

購入低下は、今期の公表済み購入量の水準に明白に表れています3

繰り返しになりますが、ポーランド国立銀行は金の最大購入者であり、第1四半期の購入量(49トン)は大きく下回りましたが、それでも今期、金準備高を19トン増やしました。ポーランドの現在の公的な金保有量は合計515トンで、準備資産全体の22%を占めます。

  • アゼルバイジャン国家石油基金は今期、金保有量を181トンに増やし、第1四半期末時点より16トン増やしました。現在、同基金の投資ポートフォリオのほぼ29%は金が占めています。
  • トルコ中央銀行は今期、公式金準備(中央銀行+財務省)を11トン増やしたと公表しましたが、これは第1四半期の増加量のほぼ2倍に相当します。年初来の累計購入量は17トンとなり、公的な合計金準備は635トンに増えました。
  • カザフスタン国立銀行も今期の購入量を増やし、金保有量の増加は、第1四半期が6トンであったのに対し、今期は16トンでした。現在、金準備高は合計306トンとなっています。
  • 中国人民銀行は今期も引き続き、金準備を若干ながら増やしました。購入量は6トンと公表されており、第1四半期の購入量のほぼ半分とはいえ、年初来の累積購入量は19トンに上ります。金準備は2,299トンとなりました。
  • チェコ国立銀行は今期、第1四半期の購入量(5トン)をやや上回る正味6トンを購入しました。現在、金準備高は合計62トンとなっています。
  • キルギス共和国国立銀行は今期、公式金準備を4トン増やすことで第1四半期に売却した4トンを補い、保有量38トンを維持しました。
  • 今期のその他の銀行の購入量は、カタール中央銀行(2トン)、カンボジア国立銀行(2トン)、ガーナ銀行(2トン)、フィリピン中央銀行(1トン)、セルビア国立銀行(1トン)、ヨルダン中央銀行(1トン)でした。
  • 今期、売却を行ったのは、シンガポール金融管理局(5トン)、ウズベキスタン中央銀行(3トン)、ドイツ連邦銀行(1トン)であり、ドイツ連邦銀行は長期的な硬貨鋳造計画の一環であったものと思われます。

未公表購入量は今期も高水準ですが、やや減速傾向にあります。メタルズ・フォーカスの予想と入手できた公表データをまとめると、今期における中央銀行の需要のうち未公表分は約90トン(四半期合計値の54%)であると推定されます。

今後の見通しとして、中央銀行が外貨準備に引き続き金を買い増すというワールド ゴールド カウンシルの見解に変わりはありません。ワールド ゴールド カウンシルが実施した2025年中央銀行金準備サーベイでは、回答者の圧倒的多数(95%)が世界の中央銀行の金準備は今後12ヵ月間増加すると予想しており、43%が自行の金準備も同期間中増加すると見込んでいることがわかりました。注目すべき点は、金準備が減少すると予想した回答者がいなかったことです。

戦略的資産としての金固有の特徴と役割は、今後も中央銀行によって高く評価されるでしょう。危機時における金のパフォーマンス、価値の保全を果たす能力、有効な分散手段としての役割は、引き続き金への配分の主な理由に挙げられています。継続的な不確実性が確実であると思われる中で、なおさらこれらが重要になります。詳細については、「今後の見通し」セクションをご覧ください。

脚注:

1ここに示された中央銀行の需要には、発表済みの変化量と、未発表の購入量の推定値が含まれている。そのため、公的に発表された変化量のみを含むワールド ゴールド カウンシルの中央銀行月次統計とは異なっている。

22025年6月30日のLBMA金価格午後決め値に基づく。

3各国のデータは、本稿執筆時点で入手できた公表済みの数値に基づいたものである。さらにデータが公表された場合は改訂することがある。

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