中央銀行

31 January, 2024

中央銀行の金準備は2年連続で1,000トン以上増加しました。

  • 第4四半期の中央銀行の金需要合計は前四半期比で35%減の229トンでした。
  • その結果、中央銀行による年間の買い越しは1,037トンとなり、2022年の記録的出来高には届きませんでした。
  • 公表された2023年の総購入量と総売却量はいずれも増加しました。増加が最も大きかったのは中国人民銀行とポーランド国立銀行で、逆に売却量が最も多かったのはウズベキスタン中央銀行とカザフスタン国立銀行でした 1
     
トン 2022 2023   前年同期比変化率(%)
中央銀行&その他機関 1,081.9 1,037.4 -4

出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

 

図8:2023年、中央銀行による大量の購入が続いた*

2023年、中央銀行による大量の購入が続いた*

中央銀行による年間累積正味金需要、トン
2023年、中央銀行による大量の購入が続いた*
中央銀行による年間累積正味金需要、トン
*データは2023年12月31日現在。 出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2023年12月31日現在。

近年、金の主たるけん引役を果たしてきた中央銀行需要は、2023年第4四半期もその勢いを維持し、世界の公的金準備を229トン増加させる結果をもたらしました。年間(正味)需要は1,037トンに増加しましたが、2022年に記録された1,082tにはわずかに届きませんでした。世界の公的セクター金準備は現在、合計36,700トンと推定されています。

2年連続で購入量が1,000トンを超えたことは、近年の中央銀行による金需要の旺盛さを物語っています。2010年から、中央銀行は一貫して年間ベースでの買い越しを続けており、その間の累積は7,800トン以上に達し、そのうちの4分の1以上が過去2年間で買い付けられたものです。ワールド ゴールド カウンシルによる2022年2023年の中央銀行金準備高調査の結果から、危機の際における金のパフォーマンスと長期的価値の保全手段としての役割が、中央銀行が金を保有する主な理由であることが判明しました。

購入傾向が14年間続いているだけでなく、各国の中央銀行が公表している2023年の購入量も健全な状態を維持したことになります。購入の大部分は引き続き新興国の中央銀行によるものでした。近年、新興国の中央銀行の多くが継続的に金を買い付けています。

中国人民銀行(人民銀)が、金購入量世界最多の王座に返り咲きました。同銀行の金準備高は1年間で合計225トン増加したと公表されています。

 これは、中国が発表した単年での増加量としては少なくとも1977年以来最大の量です2。その結果、人民銀の金準備高は現在2,235トンとなりましたが、それでも中国が保有する莫大な外貨準備のわずか4%にすぎません。2023年、2番目に多くの金を購入したのはポーランド国立銀行でした。4月から11月までにポーランド国立銀行は130トンの金を購入し、保有量は57%増の359トンになりました。人民銀同様、これはポーランド国立銀行の年間購入量としては過去最高であり3、かつて同行が掲げた目標の100トンを上回る結果となりました4。10月、ポーランド国立銀行のアダム・グラピンスキー総裁は、ポーランドの外貨準備の20%を金が占めるようになることを望んでいると述べました(現在の金のシェアは12%)5

この2行以外の購入は比較すると相対的に控えめでしたが、重要度の点では劣るものではありませんでした。先進国の中央銀行としては、シンガポール金融管理局が再び唯一の買い越し実績を残し、金準備高を77トン増の230トンまで引き上げました。リビア中央銀行は6月に30トンを購入し、1998/9年以来となる金準備高の増加を記録しました。現在の金準備高は合計147トンです。チェコ国立銀行が購入した金19トンは、年間増加量としては1993年以来となる同銀行の最高記録で、チェコ共和国の金準備高は31トンになりました。 

金準備高を1トン以上増加させた銀行にはインド準備銀行とイラク中央銀行も含まれます。欧州中央銀行も1月に、金準備高を約2トン増加させましたが、これはクロアチアのユーロ圏加盟に伴う金の移転によるものでした。

売却量が最も多かったのはカザフスタン国立銀行(11月時点で47トン)とウズベキスタン中央銀行(25トン)でした。この2国は有力な金産出国であることから、中央銀行はそれぞれ国内で金を買い付けており、また、豊富な公的金準備の一部を積極的に運用しています。そのため、近年見られる買いと売りとの間の大きな振れ幅はまったく驚くべきことではありません。7月のブルームバーグへの声明の中で、カザフスタン国立銀行は、外貨準備に占める金の比率を(入手可能な最新データである11月の58%から)50~55%に引き下げることを目標としていると明言しました。6

 

図9:各国中央銀行による公表済み購入量

各国中央銀行による公表済み購入量

国別の正味金購入/売却、トン
各国中央銀行による公表済み購入量
国別の正味金購入/売却、トン
*データは2023年12月31日現在(入手可能な場合)。 出所:国際金融統計(IMS IFS)、各国中央銀行、ワールド ゴールド カウンシル

出所: 国際金融統計(IMS IFS), 各国中央銀行, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは 2023 年 12 月 31 日現在(入手可能な場合)。

ボリビア中央銀行は、同国の金保有量が5月から8月の間に(これが入手可能な最新データです)、18トン減少したことを公表しました。これは、5月に可決された公的金準備のマネタイゼーション(売却による現金化)を可能にする新しい法律に基づいた措置の結果です7。4月末以後、公的金準備が43%減少したことで、金保有量は合計24トン強となりました。報道によれば、ボリビア中央銀行は最低22トンの金準備を保持しなければならないとのことです8

2023年、トルコ中央銀行も売り越しとなりましたが、その量はわずかでした9。金地金の輸入が一時的かつ部分的に禁止された間のきわめて旺盛な内需を満たすため、3月から5月の間に159トンを売却しましたが10、公的金準備高は前年末より2トンの微減で1年を終えました。5月以降、戦略的な購入が再開されたことで、公的金準備は540トンまで回復しました。

2024年の展望に関連して、この分野について予測することはこれまで同様、容易なことではありません。しかし、3年連続で1,000トン超の買い越しが実現するとは考えにくいものの、2010年以来続いている購入傾向が衰える兆しはあまり感じられません。このことは、世界各国の中央銀行は今年も買い越しを続けるという、ワールド ゴールド カウンシルの見解を裏付けるものです。詳しくは「今後の見通し」セクションをご覧ください。

脚注

  1. 本稿執筆時点で公表済みのデータ。ゴールド・デマンド・トレンドの目的において、中央銀行需要とは、各国中央銀行および(該当する場合、IMFや主権国家資産ファンドなどの超国家的組織を含む)その他の公的機関による純購入量(総購入量から総売却量を差し引いた量)として定義されている。ワールド ゴールド カウンシルの四半期ごとの中央銀行需要データはメタルズ・フォーカスから提供されたものであり、公共分野の活動に関する独自の推定値には、IMF IFSレポート、国際貿易データなどさまざまな情報源が組み込まれている。そのため、公表済みのデータは、ゴールド・デマンド・トレンドで取り上げるデータのサブセットとなっている。いずれのデータセットも、新しい情報が入手できた場合や、最新の更新済みデータに対応するため、改訂される可能性がある。

  2. 1977年以降の、IMF IFS経由で公表されたデータに基づく。2009年4月に公表された人民銀による454トンの金購入は、2003年から2009年までの6年間の累積数量である。また、2016年6月に公表された604トンの金購入は、2009年から2015年の6年間にわたって買い付けられたものだった。

  3. 1979年以降の、IMF IFS経由で公表されたデータに基づく。

  4. トルコの公的部門の金準備は、中央銀行が保有する金と財務省が保有する金の合計である。これは金準備の合計から、中央銀行が商業セクターの金政策、例えばリザーブオプションメカニズム(ROM)、担保、預金、スワップ等に関連して保有する金を差し引いたものに相当する。この方法論に関する情報は、次のリンク先を参照のこと:www.gold.org/goldhub/data/gold-reserves-by-country

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