金が戦略的資産になる理由

金は、投資対象、準備資産、宝飾品、テクノロジー部品など多種多様な需要に支えられています。そして非常に流動性が高く、誰の債務でもなく、信用リスクを伴わず、希少性があり、歴史的に価値を維持してきました。

金を適切に評価してポートフォリオのインパクトを最大化する

株式や債券に用いられる最も一般的な評価方式の多くは、金にそのまま適用することができません。クーポンや配当がないため、典型的な割引キャッシュフローモデルは当てはまらず、期待される利益や株価純資産倍率もありません。そのため金の潜在的な価値を適切に評価することが困難です。そしてここに、ワールド ゴールド カウンシルが、金の価値をより適切に理解するためのフレームワークを開発するチャンスがありました。

ゴールド・バリュエーション・フレームワーク(GVF)とは?

GVF とは、投資家が金の需給を動かすドライバーを理解して、それらが金価格のパフォーマンスに与えるインパクトを市場の均衡理論に基づいて判断できるようにするツールです。 GVF は、ワールド ゴールド カウンシルのウェブベースのツール QaurumSM の土台であり、オックスフォード・エコノミクスが提供するカスタマイズ可能なマクロ経済シナリオにおいて、金の潜在的パフォーマンスの評価を可能にします 1

 

ワールド ゴールド カウンシルの分析によると、 金価格のパ フォーマンスは主な 4 つのドライバーの相互作用によって説 明できます。

  • 経済発展:経済成長期は、宝飾品、テクノロジー、長期的貯蓄需要を大いに後押しする
  • リスクと不確実性:市場の低迷は、しばしば安全な避難先としての金への投資需要を押し上げる
  • 機会費用:競合する資産、特に債券(金利を通して)や通貨の価格が、金に対する投資家の態度に影響する
  • モメンタム:キャピタルフロー、ポジション、価格トレンドが金のパフォーマンスを勢いづけることもあれば衰えさせることもある

 

 

金の長期的短期的ドライバーに関する詳細は Goldhub. com の data セクションを参照。

金は以下の 4 つの点でポートフォリオを強化

リターン

分散投資

流動性

ポートフォリオのパフォーマンス

2022 年も、インフレ、サプライチェーン不安、コロナによる不確実性が引き続き投資家の悩みの種

インフレは 2021 年を通してとりわけ重要であった世界的なテーマですが、2022 年も引き続き投資判断における重要な情報となっています。2021 年前半の新型コロナウイルス感染症の影響を背景にインフレ水準の上昇は一時的であるとの印象を持つ中央銀行も多かったものの、こうしたコンセンサスは 2021 年後半には変化しました。今や一部の中央銀行は長期間にわたりインフレが継続するとの認識を示し、2022 年に利上げを行う見通しとなっています。それとは対照的に、中国インドおよびECB などは緩和的な政策を継続するものとみられています。

一方で、パンデミックによりもたらされたサプライチェーンのボトルネックがまだ完全には解消されていません。最近の感染者急増に対し、過去 2 年間にわたり経済成長を阻害してきたような正式なシャットダウン的措置を講じることに各国政府がためらいを見せているのも事実ですが、こうした態度も新たな変異株の出現により変わる可能性があります。また、テクノロジーから輸送までのさまざまなセクターにまたがるサプライチェーンの混乱が再燃すれば、経済成長に悪影響を与え、さらなるインフレ圧力が生じるおそれがあります。

市場においては利上げとドル高が予想され、これは金価格のパフォーマンスにはマイナスとなるものではありますが、実質金利と名目金利は歴史的な低水準で推移するものと思われます。

ワールド ゴールド カウンシルの分析では、中央銀行の上昇サイクルの中でも金が好調な伸びを見せたことで、効果的なインフレヘッジとなっていることが示されています。宝飾品と中央銀行に対する需要が堅調であること、そして大きく変化する世界における市場変動の可能性と相まって、とりわけポートフォリオのヘッジとしてポートフォリオに金を加えておくことの戦略的根拠は、依然として説得力のあるものとなっています(2022 Gold Outlook)を参照.

ESG への配慮

ここ数年、投資家たちは、投資プロセスにおける環境、社会、ガバナンス(ESG)への配慮を高めています。たとえば、合わせて約 18 兆米ドルもの投資を行っている機関投資家 200 人に対して MSCI が行った調査によると、73%が 2021 年には ESG 投資を拡大する予定と回答し、2 2021 年 10 月にモルガン・スタンレーが米国の個人投資家 800 人に行った調査では、79%がサステナブル投資の優先を重要視しています。3 このように ESG への注目度が上昇している背景には、ESG リスクを積極的に管理することを企業に求める圧力の高まりがあります。またこれは、ESG パフォーマンスが優れていると、長期的な業績の改善につながるという視点の裏付けにもなっています。4 投資戦略への ESG 目標の組み入れを促進する動きは、金にも大いに関連性があります。投資家は、金が責任ある方法で産出され調達されていることを求めており、そして金はポートフォリオの中で ESG 目標の達成や関連リスクの管理を支える役割を果たすことができるからです(フォーカス 2:ESG 投資としての金).5

高まる金の重要性

機関投資家 6 は、投資の分散やリスク調整後リターンの拡大を目指して、株式や債券といった伝統的な投資資産の代わりに、オルタナティブ資産を採用するようになりました。たとえば、世界の年金基金に占める非伝統的資産(ヘッジファンド、プライベートエクイティ・ファンド、コモディティ)の割合は、1998 年の 7% から 2020 年の 26%へと増えました。米国ではこの数字が 30% に達します 7

この変化の受け皿となってきたのが金への投資です。投資家は次第に、金を主流投資先と認識するようになっています。世界の投資需要は 2002 年以降に年率平均 10%のペースで成長しましたが、同期間に金価格はほぼ 7 倍に上昇したのです 8

ワールド ゴールド カウンシルの分析の結果は、仮に過去 10 年間、架空の平均的なポートフォリオの 4 ~ 15%(地域や構成により異なります)の金を追加していれば、リスク調整後リターンが上昇していた可能性があることを示しています9

 

図 1:金への投資は、世界的な架空の平均的ポートフォリオのリスク調整後リターンを向上させることができる

金への投資は、世界的な架空の平均的ポートフォリオのリスク調整後リターンを向上させることができる

平均的な投資ポートフォリオでの金投資における効率的フロンティアの範囲(地域別)

金への投資は、世界的な架空の平均的ポートフォリオのリスク調整後リターンを向上させることができる
平均的な投資ポートフォリオでの金投資における効率的フロンティアの範囲(地域別)
* 横棒は、地域別の架空の平均的なポートフォリオに対する最適な金比率。マーカー部分は、リスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。各地域のポートフォリオ構成に関する詳細については、9 ページの図 13、10 ページの 図 14a および 14b、ならびに本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。 出所:World Gold Council

出所: ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 横棒は、地域別の架空の平均的なポートフォリオに対する最適な金比率。マーカー部分は、リスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。各地域のポートフォリオ構成に関する詳細については、9 ページの図 13、10 ページの 図 14a および 14b、ならびに本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。

重要な構造的変化が後押しし、金のパフォーマンスはここ数十年にわたり好調

1. 金融政策

持続的な低金利によって金保有の機会費用は減少しており、特に歴史的な高水準でマイナス金利が発生している債券と比較すると、真の長期的リターンを生み出すことが強調されている。;

2. 中央銀行の需要

各国の中央銀行において、主に外貨準備の安全性と分散を確保するため、金への関心が急激に高まった。このことが他の投資家にも、投資に適した金の性質について検討することを促した。

3. 市場のリスク

世界的な金融危機によって、効果的なリスク管理が改めて注目されるとともに、相関性がなく非常に流動性の高い金などの資産の評価が高まった。貿易摩擦、経済や政治の見通しに関す懸念が契機となって、投資家たちは伝統的なリスクヘッジ手段として金を再検討している。

4. 市場へのアクセス

金を裏付けとする ETF が、金市場へのアクセスを促進して戦略的投資としての金に対する関心を強力に支え、保有コストを抑制し、効率性を改善してきた。

5. 新興国市場の成長

経済発展、特に中国とインドの発展により、金の消費者基盤と投資家基盤が拡大し、多様化した。

出所: ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

脚注

1オックスフォード・エコノミクスは、グローバル経済予測と定量分析のリーディングカンパニーで、モデリングのスペシャリストでもある。オックスフォード・エコノミクスのデータに関する重要な開示情報、そして利用可能なシナリオの詳細、前提条件、各シナリオで用いるデータ、各シナリオが仮説的に金の需給やパフォーマンスに与えるインパクトについては、Qaurum を参照のこと。

2MSCI Investment Insights Report 2021

32021 Sustainable Signals Individual Investor, Morgan Stanley, January 2021

4Refinitiv, How do ESG scores relate to financial returns, August 2020.

5Gold and climate change: 現在および将来の影響、2019 年 10 月。

6機関投資家は、投資信託、銀行、証券会社、ヘッジファンドといった形で、クライアントのために資産を大規模にプールしたポートフォリオとして保有・運用する。

7Willis Towers Watson, Global Pension Assets Study 2020, February 2020 and Global Alternatives Survey 2017, July 2017.

82001 年 12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日。

9地域に応じた架空のポートフォリオ構成の詳細は、9 ページの図 13 を参照。2001 ~ 2021 年のデータに基づく。これに加えて、本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利についても参照のこと。

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