供給

31 January, 2023

2022 年の総供給量は、鉱山生産とリサイクルがともに小幅に増加したため、前年比 2%増となりました。

  •  年間鉱山生産量は前年比で 1%増加しましたが、依然として 2018 年のピークは下回ります。
  • 2022 年末時点の世界のヘッジポジション正味残高は 167 トンで、1 年を通してほぼ一定でした。
  • 2022 年のリサイクル金の供給量は 1%の増加で、同年の年間平均金価格が過去最高値に達したにもかかわらず、過去最高だった 2012 年の供給量を 30%下回りました。
トン 2021 2022   前年同期比
総供給量 4,682.4 4,754.5 2
鉱山生産量 3,568.9 3,611.9 1
産金会社のネットヘッジ -22.7 -1.5 - -
リサイクル金 1,136.2 1,144.1 1

出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

  •  年間鉱山生産量は前年比で 1%増加しましたが、依然として 2018 年のピークは下回ります。
  • 2022 年末時点の世界のヘッジポジション正味残高は 167 トンで、1 年を通してほぼ一定でした。
  • 2022 年のリサイクル金の供給量は 1%の増加で、同年の年間平均金価格が過去最高値に達したにもかかわらず、過去最高だった 2012 年の供給量を 30%下回りました。

 

2022 年の総供給量は前年比 2%増で、2 年続いた減少は止まりました。年間鉱山生産量は 3,612 トンで、2018 年以降で最大でした。これは鉱業界が新型コロナウイルス感染症をめぐる混乱をほぼ免れたことと、中国・山東省の安全対策のための操業停止が終わり、同国が丸 1 年の生産量を確保したことが要因です。ベース効果と現地通貨建て金価格の動きによって生じるリサイクルの地域的な増減は、年間で見るとほぼプラスマイナスゼロでした。2022 年のリサイクル金の供給は基本的に横ばいで、1%弱増えて 1,144 トンでした。世界のヘッジポジション正味残高も年間でほとんど変化しませんでした。ただし第 4 四半期は年末に多少のヘッジ取引が発生した可能性があり、これは 2023 年 2 月の四半期報告で捕捉される見込みです。

鉱山生産量

2022 年第 4 四半期の鉱山生産量は前年同期比 1%減の 930トンで、同年の四半期では唯一、前年割れとなりました。年間生産量は合計 3,612 トンと、前年を 1%上回りました。2021 年は新型コロナウイルス感染症による生産の混乱や、中国の広い範囲で安全対策のための操業停止がありましたが、2022 年はそれらの影響がなくなりました。従って生産量が伸びなかったことは、金生産がプラトー(高原)状態に近づいているという主張の信憑性をさらに高めます。

 

2022年の鉱山生産量は1%増加するも、依然としてピークには届かず*

GDT FY 2022: Mine Production Chart [JP]

出所: GFMS, メタルズ・フォーカス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*Data to 31 December 2022.

中国の生産量の回復が、ロシア、米国、南アフリカの減産を相殺しました。

2021  年のほとんどの期間で安全対策のために操業を停止していた山東省の鉱山が通常操業に戻ったことから、中国の生産量は 42 トン(13%)増加し 374 トンになりました。この回復が、他国の減産――南アフリカはストライキと全国的な電力供給の問題で 11 トン(10%)減の 103 トン、米国はグレード低下とオペレーションの問題で 11 トン(6%)減の 175 トン、ロシアは主にウクライナ侵攻関連の問題で 27 トン(8%)減の 304 トン――を相殺しました。

地域別に見ると、2022 年の生産量の増加が最も大きかったのはアジアで、中国の生産回復が牽引して前年から 11 トン増加しました。一方、CIS の鉱山生産量は前年比 10 トン減、中南米は前年比 9 トン減でした。

第 4 四半期に見られた課題の多くは、グレードとオペレーションに関するものでした。

中国は 2022 年第 4 四半期に、鉱山生 産量の 9%の増加を報告しました。ただし、安全対策のための操業停止から復帰したことが理由で前年を上回るのは、同四半期が最後になるでしょう。ワールド  ゴールド  カウンシルの予測によると、中国では環境規制の強化を受けて小規模オペレーションがいくつか終了するため、今後数年間の生産量は再び緩やかな減少傾向になる見込みです。モーリタニアでは、2021 年下半期にタシアスト鉱山で火災による生産停止があったことを反映し、第 4 四半期の生産量が 4 倍以上に増加しました。ガーナでは、オブアシ鉱山の増産とビビアニ鉱山の生産再開に伴って、第 4 四半期の鉱山生産量が前年同期比 12%増加しました。マリでは、フェコラ鉱山でのグレード上昇によって前年同期比 11%の増加になりました。

第 4 四半期は多くの国で鉱山生産量の減少が報告されました。メキシコでは、ペニャスキート鉱山やロスフィロス鉱山などいくつかの鉱山でグレードが低下したため、生産量が前年同期比 10%減となりました。ブルキナファソの 2022 年第 4 四半期の鉱山生産量は、サンブラド鉱山やエサカネ鉱山でのグレード低下と、セキュリティ問題をめぐるタパルコ鉱山の操業停止の結果、前年同期を 11%下回りました。コロンビアは第 4 四半期に前年同期比 27%の減少を報告しましたが、これは 2021 年第 4 四半期に人力小規模金採掘の生産量が急増したのに対し、2022年はそれがなかったことが関連しているようです。ロシアの 2022 年第 4 四半期の鉱山生産量は、前年同期比で 10%減少しました。この減少にはオリンピアダ鉱山やブラゴダトノエ鉱山のグレード低下が影響しましたが、制裁措置も減産を助長しました。報告によると、採掘業者、特に小規模企業は、試薬、予備部品、その他消耗品の調達に苦労しており、それらがすべて生産に影響しています。1 また、ウクライナ戦争の関係でロシアからの情報の流れが滞っていることもありますが、輸入規制によって新規鉱山の建設が遅れているという報告も聞かれます。

最近 7 つの新たな産金会社が生産を開始し、それらの合計生産能力は年間約 15 トンです。これに民間の小規模鉱山の生産が加わりますが、現状の鉱山生産量に与える影響は軽微です。しかし、 2023 年にはさらなるオペレーションの発注と拡大が見込まれており、中国の小幅な減産と対ロシア制裁による影響を十分に埋め合わせられるはずです。金鉱山生産量の見通しに関する詳細は今後の見通しセクションをご覧ください。

入手可能な最新データによると、金の採掘コストは 2022 年第 3 四半期も引き続き上昇しました。

第 3 四半期の全維持生産コスト(All-In  Sustaining  Cost:AISC)の平均は 1,289 米ド ル/オンスに達し、前年同期を 14%上回って、またも過去最高を更新しました。広範囲のインフレを受けて、すべての地域で燃料、電力、労働力、消耗品のコストが前年を上回ったために採掘コストが上昇しました。ただし平均産出グレードが前年同期比で 2%向上したことが多少の補填になりました。2022 年第 4 四半期は後半に金価格が上昇し、ワールド  ゴールド  カウンシルの推計によると 90 パーセンタイル AISC マージンがプラスを回復しましたが、引き続き産金会社の利益率は圧迫されました。

産金会社のネットヘッジ 

2022 年の世界のデルタ調整後の産金会社ヘッジポジション正味残高は、実質的に横ばいでした(2 トン減)。

ワールド  ゴールド カウンシルの現時点の推計によると、第 4 四半期に 5 トンの小幅なヘッジ解消が発生して、上半期のネットヘッジと下半期のヘッジ解消がほぼ釣り合いました。現地通貨建ての金価格の高さが年末にヘッジを促した可能性がありますが、これは各企業の 2022 年第 4 四半期の業績が発表されるまで確認できません。

こうした状況を考慮すると、2022 年第 4 四半期の活動の推計値に基づく世界のヘッジポジション正味残高は約 162 トンで、 3,000 トンを超えていた 2000 年代初頭のピーク時には遠く及びません。当時と比べると、金鉱業界のヘッジに対する姿勢は根本的に変わりました。現在の新規ヘッジポジションは、短期かつ小規模な日和見的なものか、プロジェクトや負債による資金調達のニーズに基づくものが大半を占めます。

リサイクル金

2022  年は前半と後半ではっきりと分かれました。

2022  年のリサイクルは複雑な様相を見せました。上半期のリサイクル量は
金価格の急騰を受けて前年同期比で 6%増加しましたが、下半期は金価格が低下したため同 4%減少しました。2022 年全体のリサイクル量は 1,144 トンと、前年を 1%上回りました。

第 4 四半期のリサイクル供給は、平均金価格がほぼ横ばい―― 第 3 四半期の 1,728.91 米ドル/オンスに対して 1,725.85米ドル/オンス――だったにもかかわらず、前四半期比で 8%増加し、292 トンになりました。前四半期を上回った主な理由は、インドのリサイクル活動の増加です。

2022 年は平均金価格が過去最高を記録したにもかかわらず、リサイクル金の供給量が 2009 年の最高記録を 30%も下回ったことは注目に値します。ワールド  ゴールド  カウンシルでは、 2022 年のリサイクル供給が低調だったことについて、大きく2 つの理由があると考えます。第一に、世界的な金融危機やユーロ圏の危機の時期とはまったく対照的に、古い金宝飾品の投げ売りという情報がほとんど聞かれませんでした。パンデミック時には、消費者や企業に大規模な財政支援が行われて雇用が守られました。またロシアのウクライナ侵攻後、欧州でエネルギー補助金が支給されたことが、エネルギー価格の高騰から市民を守ることに寄与しました。第二に、金価格が過去最高を記録してから 10年しか経っていないため、消費者が溜め込んだ古い/破損した/不要になった宝飾品の量が限られていたと考えられます。

2022 年第 4 四半期は、中東のリサイクル供給の減少が目立ちました。

同地域の供給は前年同期比で  30%以上、前四半期比で 8%近く減少しました。これがなければ世界のリサイクル供給はもっと大きく伸びたでしょう。中東のリサイクル供給の弱さを助長した要因は 2 つあります。1 つ目は、イラン、トルコ、エジプトにおける政治・経済的な懸念です。これらの国では高いインフレ率、通貨安(実測または予測)、政情不安が相まって金を保持し続けることの魅力が高まりました。2 つ目は、炭化水素価格の上昇によって、イラクを筆頭に同地域の大部分で情勢が上向いたことです。この地域の国々――自国通貨を米ドルとペッグする国が多い――では、11 月初めに米ドル建て金価格が回復し始めた後に、リサイクル供給が増加するという流れが共通していました。

 

 

リサイクルは2022年に1%増加したが、ピーク時を30%下回る*

GDT FY 2022: Recycling Chart 1 [JP]

出所: メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* データは2022年12月31日現在。

第 4 四半期のリサイクル市場では、急激に供給を増やしたインドも目立ちました。インドが圧倒的な市場規模を持つ南アジア地 域のリサイクル供給は、前年同期比で 40%近く、前四半期比では約 60%も増加しました。リサイクル量が急増したのは、主にインド・ルピー建て金価格の平均値が前四半期比で 3%上昇し、第 4 四半期中の最安値から 10%上昇して通年の最高値付近で 1年を終えたことが理由です。このことは 2 つの影響をもたらしました。まず、時期的に弱い宝飾品需要が抑圧されました。それによって、新品と交換される古い宝飾品の量が減り、単純に売却される量が増えました。

その他の市場を見ると、欧州では主にユーロ建て金価格の上昇がリサイクル供給を促進し、2022 年第 4 四半期は前年同期比 8%の増加となりました。これに対し北米では、米国で通貨による後押しが得られなかったことから、供給量は前年同期を下回りまし
 
た。最後に、中国では第 4 四半期にリサイクル量が増加しました。これは人民元建ての金価格の上昇が 1 つの理由ですが、同国の景気減速を受けて現金確保のために金が売却されたという証拠も見られます。

いくつか例外的な地域はあるかもしれませんが、2022 年の中国のリサイクル量について、ロックダウンの実質的な影響はなかったと思われます。今や中国経済の再開が急ピッチで進んでいるため、この重要な金消費国のリサイクル量を追跡するのも興味深いでしょう。

ワールド ゴールド カウンシルでは、2023 年に金価格が急騰しない限り、リサイクル供給は年間を通して緩やかに減少すると考えています。
詳しくは今後の見通しセクションをご覧ください。

 

2022年第4四半期と通年のリサイクル需要には地域差*

2022年第4四半期と通年のリサイクル需要には地域差*

2022年第4四半期と通年のリサイクル需要には地域差*

出所: メタルズ・フォーカス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* データは2022年12月31日現在。

脚注

  1. 試薬は鉱物加工に用いられる重要な化学物質である。