Ray Jia


Marissa Salim

サマリー

  • 日本のインフレ率は7月にさらに上昇しました。労働力不足や商品価格の上昇を背景に、今後もコスト上昇圧力が高止まりする可能性があります。 
  • 日本銀行(BOJ)による追加利上げの可能性やタームプレミアムの上昇を受け、日本国債(JGB)利回りは引き続き上昇する公算が大きく、投資ポートフォリオのリスクを高める要因となり得ます。 
  • 金は、インフレヘッジおよびポートフォリオのリスク分散手段として、日本の投資家にとって引き続き重要な役割を果たすと考えられます。 
  • 2026年上半期には、金地金および宝飾品需要はやや軟調となった一方で、日本の金ETFには堅調な資金流入が見られました。

日本ではインフレ圧力が依然として継続

7月の日本のインフレ率は上昇し、総合CPIは3カ月連続で伸びが加速しました。また、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)も反発しています(チャート1)。

  • 背景の一つとして輸入商品価格の急上昇が挙げられます。輸入物価は7月に過去最高水準へ達しており、資源輸入への依存度が高い日本ではインフレ圧力を高める要因となっています。1また、世界銀行の見通しによれば、堅調な世界需要や供給制約などを背景に、エネルギーや金属を中心とする商品価格は今後も上昇する可能性があります。2
  • さらに、賃金と物価の相互作用によるインフレ圧力も続いており、これは構造的な要因によるものです。日本の労働市場は依然として逼迫した状況にあり(チャート2)、高齢化の進展に伴い生産年齢人口の減少が続いています。また、厳格な移民政策は外国人労働者の供給拡大を制約しています。3その結果、人手不足を背景に春闘での賃上げが継続しており、2026年の平均賃上げ率は約5%と、高水準の賃上げが3年連続で実現しました。4
 

チャート 1: 日本のインフレ率は足元で上昇

総合CPIとコアCPI、 コアコアCPI*

Japan Inflation: Chart 1 - [JP]

*2026年7月時点の日本CPI、生鮮食品を除く日本CPI、生鮮食品・エネルギーを除く日本CPIの月次データに基づく。
出典:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

 

チャート 2: 日本の労働市場は構造的にタイト

日銀短観- 雇用人員判断DI*

Japan Inflation: Chart 2 - [JP]

*2026年第2四半期データに基づく。
出典:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

今後の見通し:根強いインフレ、金利上昇、債券リスクの上昇

  • 輸入商品価格の上昇や賃金上昇を背景に、日本では今後もインフレ圧力が続く可能性が高いと考えられます。日銀が6月に実施した利上げの主な理由の一つもインフレ上振れリスクであり、「物価安定目標である2%を上回る水準へ上振れる可能性」が指摘されています。5
  • 日本国債利回りは9月初旬に3%へ達し、過去30年で最高水準を記録しました(チャート3)。インフレ懸念を背景とした日銀の追加利上げ観測が利回り上昇を後押ししています。また、高市政権による拡張的な財政運営に加え、高齢化に伴う社会保障費の増加や防衛費の拡大を背景に、日本の政府債務は過去最高水準にあり、これも国債利回りの上昇圧力となっています。こうした環境は今後も継続する可能性があります。これまで弊社が指摘してきた通り、利回り上昇とインフレ率上昇は株式と債券の相関を高める傾向があり、その結果、ポートフォリオ全体のリスクが高まる可能性があります(チャート4)。 
 

チャート 3: 日本国債利回りは30年ぶりの高水準へ

10年物日本国債利回りと政策金利*

Japan Inflation: Chart 3 - [JP]

* 2026年9月4日までの週次平均値。
出典:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

 

チャート 4:日本国債のポートフォリオ分散効果は低下

日本国債と60/40ポートフォリオの相関、および60/40ポートフォリオにおける日本国債のリスク寄与度*

Japan Inflation: Chart 4 - [JP]

* 2006年1月から2026年8月までのデータを使用。BPI国債指数およびTOPIXの月次リターンに基づいて算出しています。ポートフォリオは日本国債40%、TOPIX 60%で構成されています。リスク寄与度は、「ボラティリティ × 相関係数 × ウェイト」に基づいて算出したポートフォリオ全体のリスクに占める債券の寄与割合を示しています
出典:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

日本の投資家にとって高まる金の役割

  • 金の今後の見通し:   金価格は2026年1月から8月にかけて、円建てで7%、米ドル建てで4%上昇しました。6投資家のポジション変化、金利見通し、米ドルの動向が主な要因です。今後は、FRBの金融政策見通しに大きく左右される米国短期国債利回りの動向が、金市場の変動要因となる可能性があります。一方で、米国政府債務の増加懸念の高まりや米財務省による市場介入は、引き続き金市場を支える要因になると考えられます。また、地政学リスクの高まりやポートフォリオ分散ニーズの拡大を背景に、8月には世界の金ETFへの資金流入が加速しました。加えて、中央銀行による金購入も引き続き堅調であることから、金は今後も投資家の注目を集める可能性が高いとみています。
  • インフレ・ヘッジとしての金:金は2000年以降、年率換算で13%のリターンをもたらし、現金投資の0.1%を大幅に上回りました。7さらに、インフレ調整後の実質ベースでも、金は年率6%の実質リターンを維持しており、長期的に購買力の保全に寄与してきました。(チャート5)
  • ポートフォリオ分散資産としての金:  すでに述べたとおり、インフレ率や金利の上昇局面では、債券はポートフォリオのリスクヘッジ手段としての機能が低下する傾向があります。一方、金は歴史的にみてリターン向上とリスク分散の双方に貢献してきました。これは、金がリスク資産に対して低い、あるいは負の相関を示してきたためです。日本の企業年金ポートフォリオを想定した弊社の分析では、資産配分に金を5%組み入れることで、ポートフォリオ全体のボラティリティを低下させると同時に、リターンの改善が期待できることが示されています(チャート6)。
 

チャート 5: 金は長期的に購買力を維持 

金および円キャッシュの名目およびインフレ調整後リターン*

Japan Inflation: Chart 5 new - [JP]

*2000.年1月=100。LBMA午後金価格(円建て)、モーニングスター日本円1カ月キャッシュ・インデックス、および日本のCPIデータに基づき算出。データ期間は2000年1月~2026年8月。
出典:ブルームバーグ、モーニングスター、ワールド ゴールド カウンシル

 

チャート 6: 金はポートフォリオのリスクを低減し、リターンの向上に貢献 

日本の企業年金の仮想ポートフォリオに、金を5%組み入れた際のリスクおよびリターンの変化*

Japan Inflation: Chart 6 - [JP]

*企業年金の仮想ポートフォリオは、日本国債(当初比率(以下、同)18.7%、リターン(以下、同)BPI国債指数のリターン)、外国債券17.1%、Bloomberg Global Aggregate Index ex-Japan)、国内株式(9.5%、TOPIX)、外国株式(13.7%、MSCI World Index ex-Japan)、オルタナティブ資産(19.9%、TOPIX REIT指数、FTSE EPRA/NAREIT指数、S&Pインフラ指数およびBarclay Equity Long/Short指数を均等配分と仮定)、一般勘定(16%、年率1.5%の収益率と仮定)、短期債券(5.1%、BPI JGB 1-3年指数)および金(5%、LBMA金価格PM)で構成されています。上記、金を除く資産配分比率は企業年金連合会「企業年金に関する基本統計」2024年度末データに基づく。分析には2006年1月から2026年8月までの月次円建てデータを使用。金の組入比率を5%とした場合、その他の資産の比率は当初比率で案分して減少。
出典:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

日本の金の需要と供給の動向

  • 2026年第2四半期(4~6月期)の金宝飾品需要は2.2トンとなり、前年同期比25%減、前四半期比24%減となりました。金価格の高止まりと価格変動の大きさが需要の重石となりました。一方、金地金・金貨投資はネットでマイナス2.7トンとなり、売り越しに転じました。国内金ETF保有残高も四半期ベースで1トン減少しました。金価格が下落したことに加え、日本国内の利回り上昇や株式市場の堅調なパフォーマンスが、投資家の関心を他の資産へ向かわせたものと考えられます。リサイクル金供給は、金価格の下落を受けて7.6トンとやや減少しました。
  • 2026年前半を通しては、金価格が前年同期を大幅に上回る水準で推移するなかで、金宝飾品需要は+5トンと前年同期比13%減少しました。一方、第2四半期の売り越しが影響し、金地金・金貨投資は上半期全体で0.3トンの純流出となりました。一方で、金ETFには堅調な資金流入が続き、1月から6月にかけて保有残高は+5トン増加し、総保有量は71.4トンへ拡大しました。地政学リスクの高まりや、主として第1四半期の金価格上昇がETF需要を支えました。上半期のリサイクル金供給は15トンとなり、前年同期をやや下回りました。
 

チャート7:第2四半期に金投資需要は純流出へ転換

日本の金需要(セクター別)*

Japan Inflation: Chart 7 - [JP]

*  2026年第2四半期までのデータ。
出典:ICE ベンチマークアドミニストレーション、メタルズフォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

 

チャート 8: リサイクル金供給は鈍化したものの高水準を維持 

日本のリサイクル金供給量(四半期毎)*

Japan Inflation: Chart 8 - [JP]

*2026年第2四半期までのデータ。
出典:ICE ベンチマークアドミニストレーション、メタルズフォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

Footnotes

1What Does Japan Import the Most? Top Imports (2026), 19 March 2026.

2Commodity Markets Outlook, April 2026, 30 April 2026.

3Japan’s “Foreigner Policy” Skirts Key Issues: No Orderly Coexistence Without Plan for Immigration | Nippon.com, 27 February 2026.

4Japan’s 2026 wage talks result in third year of gains above 5% - The Japan Times, 3 July 2026.

5ニュースリスト:日本銀行 日本銀行2026年6月24日

62026年8月31日時点のLBMA午後金価格(米ドル建て、および円建て)に基づく

72000年1月から2026年8月までのLBMA 午後金価格(円建て)およびMorningstar Japanese Yen Cash indexに基づく

Disclaimer [+]Disclaimer [-]