2016年第1四半期の金需要は前年同期から21%拡大し、1,290トンとなり、四半期の需要としては過去2番目の水準となりました。この増加は不安定な経済と金融市場の不透明さへの投資家の懸念に伴い、ETF(上場投資信託)への大きな流入が生じたことによるものです。同時期に宝飾品需要は19%低下しましたが、これは価格高騰とインドでの業界ストライキ、ならびに中国経済の減速のため消費者の多くが購入を遅らせたことが原因でした。

この四半期のETFへの流入は、四半期としては2009年第1四半期以来の最高水準である364トンに達し、これに対し前年同期は26トンでした。欧州と日本のマイナス金利に加え、中国経済の不透明さ、米国での利上げが緩やかである見通し、および世界的な株式市場の混乱を背景とし、リスク分散手段としての金の人気が高まりました。金地金とコインの需要は254トンで前年同期をわずかに上回りました。価格に敏感な市場での低迷は、5%の増加を示した中国(62トン)と、それぞれ55%と61%の伸びを達成した米国と英国を含む他の市場での増加により相殺されました。世界全体での投資需要は前年同期の278トンから122%増の618トンに達し、今四半期にドル建てで17%上昇した金価格の高騰を招きました。しかし、好調な投資パフォーマンスは宝飾品分野には反映されず、インドと中国での需要が低下しました。消費者の不安感と金価格高騰によりどちらの国でも年初からの立ち上がりは遅く、インドでの業界ストライキによってこれがさらに悪化しました。各国中央銀行は引き続き需要の大きな担い手となり、この四半期には109トンを買い入れました。各国中央銀行が米ドルからの分散を求めていることにより、買い入れが売却を上回ったのはこれで21四半期連続となりました。総供給は前年同期の1,081トンから5%増の1,135トンでした。ヘッジが40トン増加したことと鉱山生産量が734トンに微増した(前年同期は729トン)ことがリサイクルの減少を上回りました。