ワールド ゴールド カウンシ ルが本日発表した レポート『 中国の金市場: その歩みと 展望( China's gold market: progress and prospects)』は、中国の民間セクター金需要が現在の年間約 1,132 トンから 2017 年 には少なくとも 1,350 トンに達するだろうと予測しています*。中国の金需要は 2013 年に記録的なレベルに 達し、中国は世界最大の金市場となりました。2014 年は小休止となるものの、その後はさらに継続的な成長 が続きそうだと同レポートは述べています。

同レポートは、中国で金市場の自由化が始まった 1990 年代後半以降に、中国を世界最大の金の生産・消費 国に押し上げた各種要因を分析しています。また需要の急増にもかかわらず、今後、経済の短期的な鈍化が あっても、金市場が拡大を続けると予想される理由も解説しています。

今後 6 年間で、中国の中間層人口は 2 億人、即ち 6 割以上増え、5 億人に達する見込みです。これを米国 の総人口、3 億 1,900 万人と比べれば、金を買う余裕が出来た中国人消費者による新市場の規模が展望で きるでしょう。

この新中間層の出現に加え、実質所得の上昇、個人貯蓄額の増大、中国全土に亘る急速な都市化といった 要因は、今後 4 年間の宝飾・投資需要が堅調であろうことを示唆しています。

ワールド ゴールド カウンシルの極東担当マネージング・ディレクター、アルバート・チャン(Albert Cheng)は 次のように述べています。

「1990 年代後半に金市場が自由化され、2004 年には国内商業銀行が金地金商品を販売できるようになりま した。以来、中国全域で金に対する需要が驚くほど伸びています。中国では、文化的に金に対する人気が根 強く、富裕層人口の増加や政府の支援とあいまって、市場がさらに大きく成長する余地があります。中国は今 や世界の金エコシステムの中心にあります。中国は現在、経済成長の持続と金融システムの自由化を目指 す中で様々な重要課題に直面していますが、個人所得と貯蓄額の伸びが中期的には宝飾・投資の両面で金 需要の増大を支えるはずです」

今回の調査で判明した主要な点は以下のとおりです。

  • 中国では都市化の進行によって人口 100 万人以上の都市の数が 170 に*2-これらの都市に住む中 間層人口は現在 3 億人で、2020 年には 5 億人に達する見込みです。この層では可処分所得が増え ているのに投資手段は限られているため、金需要は成長を続けるでしょう。
  • 中国人の貯蓄レベルが高どまり- 中国の銀行預金残高は推定 7.5 兆ドルに達していますが、一般世 帯による金保有額はまだ小さく 3,000 億ドル程度です。中国の消費者は、金を入手しやすく安定した 投資と見ており、住宅価格の上昇と他の蓄財手段が少ない為、特にその傾向が強くなります。中国の 投資家はペーパーより現物の金取引を好み、投資手段はスモールバー、贈答用バー、純金積立商品 (GAP) が中心です。新たな金投資商品の出現によって、地金・金貨に対する中期的な需要は 2017 年までに年 500 トン近くに達する可能性があります。これは過去最高となった昨年の水準からさらに 25% 近い増加です。
  • 中国は世界第 1 位の金宝飾品市場となり、市場規模はこの 10 年でおよそ 3 倍-2013 年の数字で は 669 トンで、世界の宝飾需要の 30% を占めています。各種の推定では、需要はさらに伸び続け、2017 年には年 780 トンに達するとしています。現在、24 金の宝飾品を売る小売店は中国全土で 10 万店以上、メーカーは数千社あります。
  • 消費者の金に対する人気が揺るがない- 宝飾消費の 40% は結婚関連のものですが、中国人が金 を好む傾向は冠婚葬祭や贈答の場合に限りません。本レポートでアンケートに答えた消費者の 80% は、今後 12 カ月間に 24 金の宝飾品への消費額を維持または増加させるつもりです。その理由は、 金の価値は長期的に維持されるはずであり、自分の可処分所得が増えると予想しているからです。
  • 中国のエレクトロニクス金需要も今後の 4 年で小幅ながら伸びる見込み- エレクトロニクスを中心と して産業需要も成長してきました(2003 年の 16 トンから 2013 年には 66 トン*3)。 中国はまた、医療 におけるナノゴールドの利用など、金関連特許についても最大級の市場です。
  • 中国政府の金保有高は 2013 年末時点で 1,054 トン、世界第 6 位- この発表数字によると、金は中 国の総準備資産の 1% を占めています(ピークである 2012 年の約 2%から低下)。低下の理由は中 国の外貨準備高が急増して 2013 年末の時点で約 3.8 兆米ドルに達したからです。中国政府が金保 有高を増やしたかどうかについては憶測が続いています。
  • 中国は小規模生産国の地位からすでに金の採掘量で世界最大に成長 - 生産量はこの 10 年で 217 トンから 437 トンへと倍増しています。

レポートの原文(英語)は http://www.gold.org/ にてご覧いただけます。

お問い合わせ先

ワールド ゴールド カウンシル
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調査手法

ワールド ゴールド カウンシルでは、中国の金需要を中期的に展望する(本レポートでは 2014~2017 年と区 切った)調査を行い、知見をまとめたレポートを作成するよう Precious Metals Insights (PMI) 社に依頼しまし た。PMI 社の創業者でマネージング・ディレクターのフィリップ・クラップワイク(Philip Klapwijk)は金市場のベ テランであり、GFMS のエグゼクティブ・チェアマン、Thomson Reuters GFMS のグローバル メタル アナリテ ィクス部門のトップとして豊富な経験を積んできました。今回の調査は、中国の金市場に関する彼の深い知識 と、ワールド ゴールド カウンシルの専門知識とが融合した成果です。

さらにこれを補完する情報として、PMI とワールド ゴールド カウンシルが深圳、上海、北京の金市場参加者を 対象に共同で行った詳細なインタビュー調査もあります。同レポートはさらに、ワールド ゴールド カウンシル が近年行ってきた綿密な消費者調査の結果も利用しています。たとえば次のような調査が挙げられます。

  • 2011 年に中国の消費者 1 万人以上を対象に、金宝飾品との関係を調べた総合的な利用実態・志向 調査 (TNS による)。
  • 2013 年 5 月から 2014 年 3 月まで数次にわたり定期調査の一環として、中国の消費者を対象に、今 後 12 カ月間の金価格の変動予測と金宝飾品購買意欲について尋ねた調査 (Kadence による)。
  • 中国の消費者 1,000 人を対象に、金宝飾品および地金の購入動機を調べた調査 (TNS による)。

PMI とワールド ゴールド カウンシルの知識の集合、そこに綿密な消費者調査と業界知識とが合わせられ、詳 細でしかも示唆に富む分析レポートが生まれました。

予測上の主要な仮定

同レポートのために PMI が行った宝飾消費と投資需要の予測では、いくつか重要な仮定を置いています。

- 中国の GDP 成長率は、2014~17 年の間、年平均 6% に下がります。中国経済の規模が大きくなり、 成熟を加えていくと、自然成長率も下がっていきます。2009 年以来、成長の最大の要因は借入(ロー ン)による固定資産投資でした。しかしこれはすでに GDP を押し上げる手段として効率が悪くなってき ました。GDP の中で消費のウェイトが大きくなるような経済モデルへの移行によって、おそらく GDP 成長率も下がるでしょう。

- 民間消費は、2014~17 年の間、年平均 7.5% で成長することが予測されます。消費を主体とした経済 モデルへと徐々に移行していくには、民間消費の成長率が GDP 全体の成長率を超える必要がありま
す。しかし民間消費の成長率を制約する要因として、世界的に見て極めて高い中国の世帯貯蓄率が わずかしか下がっていない点があります。

- 中期的な金融危機発生の確率は高く、さらに上がっていきます。このリスクは、借入額のあまりに急激 な増大と相当な誤投資(malinvestment)から生じるものです。2014~17 年の 4 年間に一度金融危機 が起これば、 GDP と民間消費のいずれも成長率が下がると予測します(どの年に起きるか、正確なタ イミングと影響は予測不可能なため、GDP へのマイナス 2% の影響を 4 年間に均等に割り振った)。

- 物価上昇(インフレ)率は中期的にはコントロールされます(5% 未満に)が、インフレ予想(inflation expectations)は上がっていっても不思議はありません。もし中国で金融危機が起きれば、その後に大
規模な金融緩和がまず間違いなく行われるからです。

- 人民元の交換レートは中期的に大きな変動はないと予測しています。2014 年にはわずかな上昇が予 想されますが、2015~17 年についてはゆるやかな下降にシフトする可能性があります。このように予 測されるのは、([4 年間の]当初は)米ドル上昇の局面があるかもしれないからです。さらに金融危機が
人民元に悪影響を及ぼすおそれがあります。また当局は金融危機の影響をやわらげる手段として、輸 出セクターを支援する効果のある通貨切り下げを行うかもしれません。

- PMI の金価格に関する仮定は、2014 年は全般に弱含みと予測しています。しかしながら続く 3 年間 については金価格は回復基調となり、2017 年には年間の平均価格 1,500 ドルに達すると予測してい
ます。

*1Precious Metals Insights
*2中華人民共和国・国家統計局
*3Precious Metals Insights の推定は Thomson Reuters GFMS のデータを基にしたもの

ワールド ゴールド カウンシルについて

ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において、金に対する 持続的な需要を喚起するためのリーダーシップ活動を行っています。

ワールド ゴールド カウンシルは、金市場に関する真の洞察力を生かし、金をベースにしたソリューションやサービス、市場の育成を行っ ています。こうした活動を通じ、主な市場分野に金需要の構造的変化を喚起しています。

ワールド ゴールド カウンシルは国際金市場に対する洞察を提供することにより、富の保全や社会・環境面で金が果たせる役割について の理解を深める活動を行っています。

ワールド ゴールド カウンシルは世界の主要金鉱山会社をメンバーに持ち、英国本部のほかインド、アジア、欧州、米国などにオフィスを 有しています。